こうした個々の「たられば」はいくつもあるが、80分間を通じて試合を支配し、自分たちのペースで進めることができなかった攻撃全体が根本的な敗因ではないか。

 この大会、歴代のワールドカップ日本代表の中でも抜きん出たゴールキック成功率を誇った松田はこの試合でも後半26分の右タッチライン際からの難しいコンバージョンを決めるなど狙った4本すべてを成功。勝利の可能性を後半半ばまでつなぎ止めることに大きく貢献した。しかし、狙ったPGは後半12分の1本だけ。4年前のアイルランド戦はトライは1だったが、相手陣で優位に試合を進めることで相手の反則を誘い、4本のPGを決めている。

 これまでの試合よりは少なくなったとは言え、この日も中盤での攻撃の中心はキック。しかし、キックの高さと距離が追いかける選手と合わず、再獲得できないのはイングランド戦などと同じだった。4年前はボールを保持し、いろいろな形で攻め続け、アイルランド戦やスコットランド戦でも相手を受け身に立たせての我慢比べに持ち込んでいたのとは対照的に、アルゼンチン戦では相手にボールを渡しては防御での我慢を強いられ、相手の強いところを消すどころか存分に発揮させてしまった。

 4年前、アイルランドを破った「エコパの歓喜」では後半19分に逆転し、その後、さらに点差を広げた。2015年大会の「ブライトンの軌跡」では80分をフルに戦った後の最後の1プレーで南アフリカから逆転トライを奪っている。しかし、今大会は、イングランド戦では後半26、41分のトライで突き放され、勝ったサモア戦も退場で14人の相手に後半25、38分のトライで追い上げられた。そして、この試合も後半28分のトライで試合を決められた。この後半最後の20分に入ってから崩れた理由は、選手個々やチーム全体のフィットネスの問題か、先発と交代・入れ替え選手の力の差なのか、あるいは、試合の最終盤をコントロールできるだけの戦術・戦略の欠如なのかは今後の検証が待たれるところだ。

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残るはベスト8以降の戦い