しかし、日本は7分後にフランカーのピーター・ラブスカフニ(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)が頭部への危険なタックルでシンビン(一時退場)に。レッドカード(退場)こそ免れたものの、10分間を1人少ない状態で戦うことを強いられた。それでも相手陣に攻め込んだ日本はSO松田力也(埼玉パナソニックワイルドナイツ)がDGを狙うがチャージされ、そこから一気にトライまで持っていかれてしまった。

 35分にアルゼンチンがPGを追加した3分後、左サイドを大きく前進したWTBシオサイア・フィフィタ(トヨタヴェルブリッツ)を好フォローしたSH齋藤直人(東京サントリーサンゴリアス)がトライ、松田のゴールも決まって1点差で折り返した。ここまでは、取られてもすぐ取り返してくらいつく展開だった。

 ところが、後半開始早々の6分、アルゼンチンにトライを許してしまう。12分に松田のPG、16分にはFBレメキロマノラヴァ(NECグリーンロケッツ東葛)のDGと連続得点で2点差に追い上げながら、その2分後には、またトライを奪われた。25分、相手陣深くのPKでラインアウトからのモールを狙わず、タップキックからの鮮やかな展開攻撃で交代したばかりのWTBジョネ・ナイカブラ(東芝ブレイブルーパス東京)がトライ。それなのに、松田のゴールが決まった1分後の28分には試合の流れを大きく決定づけるトライを許してしまった。松田のPGで1点差に詰め寄った直後にトライを許し、さらに2トライを許して完敗を喫したイングランド戦が重なる試合経過だった。

 この後半28分のアルゼンチンのトライを挙げたWTBマテオ・カレーラスは、これがこの試合3本目のトライだった。試合開始直後に許したトライ同様に表面的にはCTB中村亮土(東京サントリーサンゴリアス)のタックルミスだが、スロー再生でこの場面を見返してみると別の側面が見えてくる。カレーラスは外を押さえていた松田、ナイカブラの2選手の内側にカットイン。そこを押さえる立場の中村はデコイ(おとり)で縦に入ってきたアルゼンチン選手に妨げられ、ほんの一瞬だけ動きが遅れた。これで横一線だった日本の防御に前後50センチ程度のわずかな段差が生まれる。一度カットインしたカレーラスは次のステップで外に方向を変えてこのギャップに入り込み、外に逃げながら中村のタックルを外した。「中に入ったら外」は基本とはいえ、ここでのステップとスピードは見事。オブストラクションの反則を取られずに中村の動きを妨げたデコイの選手の狡猾さとともに、このトライは相手があっぱれと言うしかない。

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日本の課題は…