AERAで連載中の「この人この本」では、いま読んでおくべき一冊を取り上げ、そこに込めた思いや舞台裏を著者にインタビュー。
イラン、トルコ、モロッコをロバと歩いて旅した日々を描いたノンフィクション。現地でロバを購入し、荷物を積み、野宿をしたり、村人に泊めてもらったりしながら歩く。著者のロバへのまなざしも読みどころ。ロバの楽しい写真多数。著者である高田晃太郎さんの初めての著書である『ロバのスーコと旅をする』。高田さんに同書にかける思いを聞いた。
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ロバと歩く旅を、「太郎丸」の名でX(ツイッター)で発信し人気を集めている高田晃太郎さん(33)。初めてロバを見たのはモロッコだった。遊牧民がたくさんの荷物をロバの背中に乗せて運んでいた。
「ロバは働き者なんだな、ということと、小柄な女性も操っていたので、自分にもできるのではないかと思いました。スペインの巡礼路を歩いたばかりで、もっと長い距離を歩く旅をしてみたいと思っていたので、ロバに荷物を運ばせることを思いつきました」
遊牧民にロバの扱い方の手ほどきを受け、ロバと旅をした。日本に戻ったものの、再びロバと知らない土地を歩き回りたいという思いから、勤めていた新聞社を退社し、昨年2月から10カ月ほど、今度はイランからトルコ、モロッコをロバと歩いた。その日々を綴ったのが本書だ。
徒歩の旅にひかれたのは、世界遺産にもなっているスペインの巡礼路、約800キロを歩いたときだった。
「歩いていると生活がシンプルになるんです。朝起きて、歩いて、夜は疲れて寝る。そのくり返し。生活が単純化されると生き方が楽になります」
今回のロバとの旅では、毎日のように親切な人に出会い、宿や食事の提供を受けた。その一方で怪しまれて警察に通報されたり、盗賊に襲われたりとトラブルにも見舞われ、読んでいてハラハラし通しだ。
毎日30キロを歩いたが、ロバがいればつらくないと高田さんは言う。