高田晃太郎(たかだ・こうたろう)/1989年、京都府生まれ。北海道大学文学部卒業。北海道新聞、十勝毎日新聞の記者を経て、イラン、トルコ、モロッコをロバと歩いて旅する。その様子を「太郎丸」の名でツイッターに投稿し、話題に(撮影/岡田晃奈)
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 AERAで連載中の「この人この本」では、いま読んでおくべき一冊を取り上げ、そこに込めた思いや舞台裏を著者にインタビュー。

 イラン、トルコ、モロッコをロバと歩いて旅した日々を描いたノンフィクション。現地でロバを購入し、荷物を積み、野宿をしたり、村人に泊めてもらったりしながら歩く。著者のロバへのまなざしも読みどころ。ロバの楽しい写真多数。著者である高田晃太郎さんの初めての著書である『ロバのスーコと旅をする』。高田さんに同書にかける思いを聞いた。

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 ロバと歩く旅を、「太郎丸」の名でX(ツイッター)で発信し人気を集めている高田晃太郎さん(33)。初めてロバを見たのはモロッコだった。遊牧民がたくさんの荷物をロバの背中に乗せて運んでいた。

「ロバは働き者なんだな、ということと、小柄な女性も操っていたので、自分にもできるのではないかと思いました。スペインの巡礼路を歩いたばかりで、もっと長い距離を歩く旅をしてみたいと思っていたので、ロバに荷物を運ばせることを思いつきました」

 遊牧民にロバの扱い方の手ほどきを受け、ロバと旅をした。日本に戻ったものの、再びロバと知らない土地を歩き回りたいという思いから、勤めていた新聞社を退社し、昨年2月から10カ月ほど、今度はイランからトルコ、モロッコをロバと歩いた。その日々を綴ったのが本書だ。

 徒歩の旅にひかれたのは、世界遺産にもなっているスペインの巡礼路、約800キロを歩いたときだった。

「歩いていると生活がシンプルになるんです。朝起きて、歩いて、夜は疲れて寝る。そのくり返し。生活が単純化されると生き方が楽になります」

 今回のロバとの旅では、毎日のように親切な人に出会い、宿や食事の提供を受けた。その一方で怪しまれて警察に通報されたり、盗賊に襲われたりとトラブルにも見舞われ、読んでいてハラハラし通しだ。

 毎日30キロを歩いたが、ロバがいればつらくないと高田さんは言う。

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