わたしは、行き詰ったら旅に出る。
友達や夫や家族を誘って旅に出ることもあれば、ふらっとひとりで旅に出ることもある。
ふだんとまったく違う世界に身を置くだけで、新しい考えが浮かぶこともあれば、悩んでいたことがちっぽけなことに思えることもある。
美味しいものを食べたり、温泉に浸かったり、町歩きを楽しんだり、博物館に行ったり、ゆっくりしてみたり。
いろんな楽しみ方をしてみる。
旅行会社で働く友人の男性に尋ねたことがある。
「どうして、旅行会社に就職したの?」
彼から返ってきた答え。
「僕の父親、実業家なんだ。でも、あちこちに女を作る人で、いつも母親とケンカしていた。そんな家庭が嫌で、僕も荒れていたんだ。
そして、家が嫌だから、高校生の頃からあちこち旅をするようになったんだ。大学生の頃には海外を旅するようになった。
いろんなところを旅しているうちに『自分て、なんて小さいんだろう』と思うようになったんだ。そして、『父親に女がいてもどうでもいいやん』と、思うようになっていた。
いつのまにか家族にも優しくなった。そして、できたら旅行会社に就職して、いろんな旅行を企画したくなった。たくさんの人に旅の楽しさを伝えたいと思うんだ」
その気持ち分かった。
海を見て、「広いなあ」と思った時、古い建物を見て歴史を感じた時、わたしも、小さなことなんてどうでもよくなる。
わたしの旅好きは、18歳の時に始まった。
行きたい大学に行けず、かなり挫折していた。
でも、その大学で友人ができて、一緒に旅行することになった。
「安く泊まれる」と聞いて、ユースホステルの会員にもなった。
JR(当時は国鉄)の周遊券を買った。
歴史好きのわたしは、萩・山口ツアーを企画した。特急券を買うお金もなく、列車を乗り継いでの旅だった。
松下村塾に行った。
「ここで、明治維新のメンバーが学んだ」
と、思うとなんか熱くなった。
もっとも、歴史に興味のないわたしの友人たちは、
「なぜ、こんなところに連れてこられたのだろう」
と、ちっとも楽しそうじゃなかった(笑)。