私が松井ニットを知ったのは何と海外です。約13年前、当時商社勤めだった私が、出張でニューヨークのMoMA(ニューヨーク近代美術館)に行った時のこと。ミュージアムショップになんだか派手なマフラーがあり、身につけてみるとやたらと首回りにフィットして気持ちいい。最初は派手!と思った柄も、その時着ていたスーツに妙にぴったりで買って帰りました。色はパープルだったと記憶しています。そのままお客様との打ち合わせに向かったところ、先方のアメリカ人のデザイナーが「そのマフラーはどこで買った! 売ってくれ!」ということになり、その場でプレゼントしたのです。また買おうと思って札を見たら「made in Japan」。びっくりしたのと同時に誇らしくもありました。
後から聞いたのですが、その頃はMoMAが世界に先駆けて松井ニットを本格的に販売し始めたころで、その後、ミュージアムショップのストール部門で5年連続売上ナンバー1! 数年してから日本で販売が開始されたという、いわば世界が先に認めた「made in Japan」だったんですね。
実はこのハイセンスなマフラーを作っているのは二人のおじいちゃん。
お兄ちゃんの松井智司さんが社長で、柄を決めています。毎年毎年、新商品を発表するのですが、よく見ると毎年全然違う柄なんです。流行色の勉強のために、いまだに美術館巡りを欠かしません。こだわりのモノヅクリが受け入れられる背景には、お兄ちゃんのデザインセンスが存在するのです。
一方、弟の松井敏夫専務は営業。スーパー営業マンです。マフラー片手に世界中のどこにでも行って、得意の語学力を生かして商談をまとめてきます。このお二人からは一切、苦労したお話を伺ったことが無く、いつも楽しく、次の目標、次の戦略のお話を聞かせていただいています。ちょっとこちらが発注を怠ると、“鈴木さん、最近発注少ないね”とのお電話が。こちらも気が抜けません。いつも真剣勝負。
ゴルフウェアにチャレンジしたり、今までとはまったく異素材のマフラーを作ってみたり。国内各所の展示会場でばったり出会うことも。松井兄弟は大忙しです。ご自分たちはハイスピードで世界中を動き回っているのに、作るニットはローテク、ロースピード。そのギャップもまた魅力の一つでしょうか。
超撥水風呂敷は先端の技で伝統を守る。
松井ニットは伝統の技で先端のデザインを求める。
様々な日本のモノヅクリのカタチ、是非体験・体感してみてください。