強く生きる女性を主人公に、世界を代表する監督&俳優が七つの物語を紡いだ「私たちの声」。日本から参加した呉美保監督と俳優の杏さんが、海外での経験やコロナ禍を経て気づいたことを振り返る。AERA2023年9月4日号より。
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――コロナ禍や日本版#MeTooを経て、日本映画界でも働き方改革の声がようやくあがりはじめているが現状はどうだろう?
杏:以前よりだいぶ変わってきてはいるな、という感覚はあります。子どもがいる・いないにかかわらず深夜や早朝ロケもだいぶ減っていますし、以前はインフルエンザだろうが何だろうが「休む」という概念すらなかったと思いますが、いまは逆に休まないといけないですよね。ただ俳優への理解や環境改善はかなり進んできていると思いますが、スタッフの方たちが同じようにできるかというとそこはまだまだ難しいと思います。どちらかといえば女性の方が、何かを諦めなければならない場面が圧倒的に多いと感じます。
呉美保(以下、呉):そのとおりですね。私自身も子どもを産んでみて気づいたことがたくさんあります。これまでは子どものいるスタッフに「現場に連れてきて、みんなで面倒をみながら撮影すればいいじゃない」なんて簡単に言っていたけれど、とてもそんなことではない。誰か一人面倒をみてくれる人を連れてこなきゃならないし、子どもがいられる場も作らないといけない。