ただ一方、ブレーカーを落とせば電源が喪失するのは、想像がつくであろうこと。さらに、止水作業の際に吐水口の確認を怠っていたことから、男性教諭の過失の程度は、通常の単純な閉め忘れより大きい可能性があるとし、こう指摘する。

「今回の件については、こうした理由から男性教諭の多少の負担はやむを得ないと考えます。ただ、同種の事案に対し、自治体が損害額の半額程度を請求するケースが目立ちますが、一見して同じようなプールの給水ミスでも、一つひとつ、事案の詳細や損害額は異なります。そもそも教員らに損害額を負担させることが適切なのかも含めて、まずはきちんと負担のあり方についての議論をすべきだと思います」

 また、村松弁護士は、川崎市長の「金額の多寡ではない」という発言を問題視する。

一個人での多額の弁償は適切ではない

「一個人に多額の弁償をさせることは適切ではないと思います。個人が弁償できる金額には限度がある一方で、企業や自治体は損害が発生した時のために保険に加入することや積み立てをすることができます。1976年の最高裁の判例も、『相当と認められる限度の損害』としています」

 たしかに、弁償額が“青天井”だとすれば、リスクの大きい作業は誰もやりたがらなくなるだろう。

 学校のプールなどで毎年のように発生している水の大量流失と高額の弁償。金額を見れば緊張するはずなのだが、自分だけはミスをしないと思い込んでしまっているのだろうか。

「職員ひとりに任せきりにせず、ダブルチェックする態勢を、どの学校や職場も導入する必要があるのではないでしょうか」(村松弁護士)

 うっかりで痛すぎる思いをしないためにも、ミスを防ぐ態勢づくりは急務だろう。

(AERA dot.編集部・國府田英之)

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