川崎市の福田紀彦市長

 ミスの自腹弁済は当たり前か、やり過ぎか――。川崎市の小学校で、プールの水を大量に流失させたとして、市が男性教諭らに計95万円の賠償を求めたことに対し、市民から抗議が殺到している。過去には公務員の同様の過失に対し、自治体が300万円という高額の弁償を求め、物議を醸した事例もあったが、こうした対応は妥当なのだろうか。ミスをしたとはいえ、自腹を切る義務はあるのか。

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 市の発表によると、5月17日午前に男性教諭が注水スイッチを操作し、プールへの給水を始めた。だが、同時に濾過(ろか)装置も作動してしまい警報音が鳴ったため、教諭は警報音を止めるためにブレーカーを落とした。

 約6時間後、教諭は水を止めるため注水スイッチを切ったが、ブレーカーを落とした際に電源が喪失しており、注水は続いた。この時、教諭は吐水口を目視で確認せず、ミスに気づくまでの5日間でプール6杯分の水が流失、約190万円の上下水道料金が発生した。

 市は損害額の半額に当たる計約95万円を校長と教諭に損害賠償請求したが、市民からは、「かわいそう」「教員不足に拍車がかかる」といった抗議が寄せられ、SNSでも「ブラック過ぎる」などの批判が出た。

川崎市長は「金額の多寡ではない」

 川崎市の福田紀彦市長は8月28日の会見で、

「教員不足を助長するという話と、この賠償の責任を誰が負うのかは全く別の話。本当に子どもたちのために働きたいと思っている人たちで、これを受けて志望するのをやめるという人は、私はいないと思う」

 と反論。請求額についても、こう見解を述べた。

「金額の多寡ではなく、行為に対してどれだけの責任を負うものなのか、という判断をしなければならない。市民に対する説明がつかない。全部、税金で負担するといったときにみなさんどう思われるか。『まけます』という話はあり得ない」

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國府田英之

國府田英之

1976年生まれ。全国紙の記者を経て2010年からフリーランスに。週刊誌記者やポータルサイトのニュースデスクなどを転々とする。家族の介護で離職し、しばらく無職で過ごしたのち20年秋からAERAdot.記者に。テーマは「社会」。どんなできごとも社会です。

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