購読している新聞はウェブ版も含め15紙。午前中2時間かけて目を通す。同じニュース、出来事がどう報道されているか。違いを読み比べるのは数十年つづけた趣味だったが、いまは仕事となった(撮影/今祥雄)

「メディアも一般の人たちもコロナが大変だと言う。その通りですが、そればかりだと気持ちが落ちる。でも彼らは、それを笑いにくるんだり、笑い飛ばしたりした。そこが表現力。『ヒルカラナンデス(仮)』はある種の発明品だったし、そのおかげで映画も発明品になれたんだと思います」

 社会や人の見方、距離の取り方の基本に「面白がり」の精神がある。テーマは選ばない。しかし、ただの「やじ馬」ではない。膨大な情報収集の上に成り立っている「やじ馬」だ。鹿島が現在購読している新聞はウェブ版も含め15紙。以前は14紙と言っていたが、1紙増えた。「朝日小学生新聞」。鹿島の娘用なのだが、鹿島が読むようになった。紙の新聞は5紙。あとはウェブだ。毎日午前中に2時間かけて目を通す。記事はテーマ別に分け、写真に撮ってタブレットに保存。紙の新聞の一覧性が好きで「紙面ビュアー」にこだわる。保存しているデータは約6万枚。新聞をこれほど毎日読む人は、報道の世界でもまずいない。

 子どものころから雑誌が好きで、中学に上がるくらいの頃、父親が買ってくる「文藝春秋」「中央公論」「月刊現代」などを読み始めた。

「ナンシー関さんが月刊現代で連載されていて、この人面白いな、と思っていたら、そのうち週刊朝日や週刊文春に書くようになって」

 何十年も前に読んだ雑誌の話がポンポン出る。

プロレスも政治も同じ 半信半疑で物事を見ていく

 プロレス通でもある。話しだしたら止まらない。

「プロレスって、リングとは別にリアルな感情がぶつかりあう世界。団体を飛びだして新団体を旗揚げする人生のドラマがある。一方で、父親が買ってくる週刊誌や月刊誌には、田中派や竹下派が分裂したりする権力闘争が書いてある。なんだこりゃ、プロレスも政治も同じじゃんと思った」

 そこから政治家や政治に興味を持った。政治を難しく捉えない。ジャンルが違うだけだ。

「新聞読み比べ」も原点はプロレスにある。中学時代、発行部数最大40万部を誇った「週刊プロレス」(週プロ)という大人気雑誌があった。試合のレポートが記者の主観によって変わり、同じことでも、違った記事になるのが面白かった「週プロ」は当時、プロレス団体から取材拒否されることもあったが、それを記事にしたりして「活字プロレス」と言われた。本物の興行とは別に、「週プロ」で記者はどう書くのか。ファンは毎号熱狂した。鹿島は、その時に読み比べに嵌(はま)った。わかりにくい興行の裏の情報の読み合いもした。ただ、そこまで熱心なプロレスファンだということは同級生や周囲には言わなかったという。

「プロレスファンということにコンプレックスもあったんです。プロレスって八百長だろうと大人たちから言われる。そうすると傷つく。自分はそんなにレベルの低いものが好きなのかと」

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