購読紙は15。政治もプロレスも、膨大な知識をベースに話芸を活かしニュースを斬る自称「やじ馬」時事芸人(撮影/今祥雄)

 お笑いタレントでコラムニストでもある時事芸人、プチ鹿島。毎朝、新聞15紙に目を通す。どこがどう報じているか、新聞の読み比べは、面白いからもう何十年と続いている。父が買ってくる週刊誌を読むのが好きだった。プロレスも選挙報道も好き。芸人として、子どものころからの蓄積が武器になった。今は選挙が面白い。選挙の現場で「やじ馬」の目を持ちつつ、芸人として突っ込む。それが新しい視点をもたらしている。

【写真】今年4月の統一地方選挙。支援者の列に並び、候補者や陣営の雰囲気をみる

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 いまニュースを語らせたら、プチ鹿島(プチかしま・53、以下、鹿島)ほど面白く話ができる者はいないだろう。政治でも事件でも、芸能でもニュースを身近なものに見立てて伝えるのが上手く、なるほどと思わせる。「時事芸人」として新聞を読み解き、雑誌や新聞の毎月の連載は17本に及ぶ。

 ラッパーのダースレイダーとのコンビで日々のニュースを語り合うユーチューブ番組「ヒルカラナンデス(仮)」は熱烈なファンが多く、ライブハウスのロフトで開かれるトークイベント「ヨルカラナンデス(仮)」は爆笑に次ぐ爆笑。会場はグルーブ感に包まれる。

 そんな鹿島に今年、新たな肩書が出来た。映画監督。ダ─スレイダーとともに初めて監督・出演した「劇場版 センキョナンデス」が2023年2月に公開。21年の衆議院選挙、22年の参議院選挙を見て回るロードムービー風選挙ドキュメンタリー。候補者を遠目に眺め、事務所の様子をうかがい、驚き、笑う。演説を聞き、「名調子だなあ」と感心し、候補者に近づいて感想を述べ、話を聞く。記者ではない。さりとて通りすがりでもない。「ただのやじ馬です」と言うが、候補者の人間性や選挙の仕方などをしっかりとウォッチしながら追いかける。そこはかとないおかしみがにじみ出る独特のテイスト。観客と等身大の目線なので、選挙や候補者がとても身近に感じられる。同作品は、全国約50館で上映。来場者は1万人を超えた。この種のドキュメンタリーで1万人超えは成功だと言われる。

 その2人の第2弾「シン・ちむどんどん」が今年8月11日から公開が始まった。テーマは昨年9月の沖縄県知事選挙。白地に赤や紫、黄色を散らしたTシャツ。トレードマークの帽子をかぶった鹿島が候補者に向かって聞く。

「好きな番組に、『ちむどんどん』(NHK)を挙げていましたが、どういう所が好きですか」

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