今年4月の統一地方選挙。大阪府知事候補の谷口真由美が大阪市の空堀商店街を練り歩く。支援者の列にダースレイダーと一緒に交じり、候補者や陣営の雰囲気をみる。「やじ馬」の好奇心全開だ(撮影/今祥雄)

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 選挙でテレビドラマについて聞く者は、まずいない。しかし彼は真剣なのだ。候補者は3人。同じ質問を投げかけた。明確な狙いがあった。地元紙に掲載された「私の公約」に候補者が3人とも、「好きなテレビ番組」としてNHKの朝の連続テレビ小説「ちむどんどん」を挙げていたのだ。もし観ていなければ、ウソを書いたことになる。そこを確かめれば、候補者の信頼性がわかる。前宜野湾市長・佐喜眞淳を見つけた鹿島は近寄って聞く。佐喜眞は間髪をいれず答えた。

「観てないです」

「観てない!」。鹿島がのけぞった。

「観る時間がないんです」

「わっはっは」。鹿島とダースレイダーが爆笑する。

 佐喜眞の人間性が引き出されたシーンだった。

 映画製作は、最初から考えていたわけではない。コロナ禍でライブが出来なくなり、窮余の策として、2人で「ヒルカラナンデス(仮)」の配信を始めたのがきっかけだ。第1回は、コロナの「緊急事態宣言」を政府が発出してから10日後の20年4月17日金曜の昼。時事的なことに関心が高い2人。気になるニュースを取りあげ、論評した。これが人気となった。ある時番組で、映画「なぜ君は総理大臣になれないのか」(20年、監督・大島新)を話題にして盛り上がった。大島が次の作品「香川1区」の撮影に入っていると知り、21年10月、香川へ行き、デジタル大臣・平井卓也と立憲民主党・小川淳也の一騎打ちに密着した。

「選挙特番」として配信したところ反響が大きく、手ごたえがあった。そこで22年7月の参院選、同年9月の沖縄県知事選に乗り込んだ。そのつど番組配信用に撮影している映像が溜(た)まっていた。これを編集して「劇場版 センキョナンデス」と「シン・ちむどんどん」の2本の映画にしたのだ。

「難しい話でも興味をもって入りやすい。コロナで苦しい時だったけど、あ、笑っていいんだなと」

 そう話すのは、「センキョナンデス」を観るのは4度目という東京の女性。京都の上映会まで追いかけてきた。山梨県甲府市の上映会に来ていた神戸在住の女性は、9回目。配信番組「ヒルカラナンデス(仮)」は1回目から視聴している。

「フラットな視点で、一つの事柄でも、いろんな見方ができることを教えてもらえる。楽しく、面白く、噛(か)み砕いてもらえるので、コロナ禍でしんどかった時に、とてもありがたかった」

 映画をプロデュースした大島は、こうしたファンが上映会にたくさん来ていたと言う。

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