だが、精神科や心療内科のクリニックの中には、家族相談に対応していないところもある。家族相談では、カルテの記入を求めると、「半分は想像、半分は本人から聞き出したことを交えて書き込むのは家族相談の“あるある”」(関本さん)。これだと対応を躊躇(ちゅうちょ)する医療機関があるのも理解できる。
関本さんも積極的に家族相談を受け入れているわけではないが、家族が消耗してしまう前に、本人に代わって相談に訪れるのは「基本的に良いこと」と考えている。それをきっかけに家族のケアができれば、最低限、共倒れは回避できるからだ。
成人している子どもへの干渉は「親バカ」と感じる人もいるかもしれない。だが、厚生労働省も「本人が相談することにハードルを感じているときや、本人があまり語らないときは、まずはご家族が相談してみるのも一つの方法です」と家族相談を推奨している。その理由は日本独特の風土も無関係ではないようだ。関本さんは言う。
「日本では、カウンセリング施設に相談したり、心療内科を受診したりすることにハードルを感じる人が多いのに加え、身内の恥は誰にも言えない、という意識が強く、家族の悩みを打ち明けられる相手がいない人も多いと感じます。それぞれの事情に応じて、家族相談も選択肢の一つとして活用することをお勧めします」
(編集部・渡辺豪)
※AERA 2023年9月4日号