しかし、カウンセリングは本人に行うもの。関本さんは「今ここにいない娘さんのことよりも、ここにいるあなた自身の不安を聞かせてください」と話しかけた。すると、母親はこんな思いを吐露した。

「社会人になった娘に自立してほしいと思い、一人暮らしを勧めたのですが、それが良くなかったのかもしれません」

 母親は「娘を追い出した」ことがマイナスに作用したのでは、とも口にした。ただ、それまで自覚していなかった自身の「不安」の正体と向き合うことで、母親は少しラクになった様子だったという。関本さんは言う。

「親子でもパートナーでも、本人に代わって相談や受診に訪れる『家族相談』で最も懸念するのは『共倒れ』です。身内の苦しみや悩みを緩和してあげられないことにストレスが高まり、本人がSOSを発してきた、ここぞという時に家族の方が消耗してしまっていて俊敏に対応できなかったということはよくあります。このケースもまずそれを回避する必要を感じました」

共倒れ寸前で相談に

 いまはSNSなどのやりとりで、同居していなくてもリアルタイムで相手の心の変化がわかる。このため、周囲も常時気をもむことになり消耗しやすい。「夫は自分の仕事のことで手いっぱいなので、子どもの悩みは自分が聞いてあげるしかない」と一人で抱え込み、共倒れ寸前で相談に訪れる母親も少なくないという。

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