社会人の子どもに代わってメンタル相談や受診に訪れる親世代の思いは切実だ。家族相談は共倒れを防ぐ上で有効に機能する面もあるという(撮影/写真映像部・松永卓也)
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 心療内科やカウンセリング施設に、本人に代わって家族らが訪れる「家族相談」。我が子の職場環境を案じて相談に訪れる親世代が目立つという。AERA2023年9月4日号より。

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「社会人の子どもに代わって親世代がカウンセリングルームに相談に訪れたり、心療内科を受診したりするケースが、ここ10年で増えています」

 こう話すのは、東京カウンセリングオフィス所長で臨床心理士・公認心理師の関本文博さんだ。

「残業が多くて体調を崩しがち」「会社で理不尽な指示を受けて大変そう」──。関本さんは現在のカウンセリング業務やクリニックでの勤務経験を通じ、我が子の職場環境を案じる親の姿にたびたび接してきた。親の受診や相談が増えるのは有名タレントが自殺したり、20~30代の過労死が大きく報じられたりした直後だという。

不安の正体と向き合う

 つい最近も、50代の母親がカウンセリングに訪れた。20代前半の娘は就職したばかり。母親は娘の状況について「今はなんとか出勤していますが、はたで見ていてもとてもつらそうなんです」と苦しそうに訴えた。そしてこう続けた。

「親として娘にアドバイスしてあげたいのですが、対処法を習ったこともなく、何もしてあげられません。対処法を教えていただけませんか」

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