いじめを苦に、自殺に追い込まれる子どもが後を絶たない。いったいどうすればいいのだろうか? 毎月話題になったニュースを子ども向けにやさしく解説してくれている、小中学生向けの月刊ニュースマガジン『ジュニアエラ』に掲載された、朝日新聞社会部・根岸拓朗さんの解説を紹介しよう。

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 いじめに苦しみ、自殺に追い込まれる子どもたちが後を絶たない。仙台市では4月、中学2年生の男子生徒がいじめ被害を訴えていたのに学校が助けられず、生徒は自ら命を絶ってしまった。いじめを防ぐための法律もあるのに、なぜ悲劇はやまないのか。

「同級生から『人間以下』と悪口を言われた」「ズボンを下げられた」。亡くなった生徒は担任の先生にこうした被害を伝えていた。ところが学校は、いじめが続いているのに「解消された」と思い込み、いじめをした側の生徒の親に事実を伝えることも、いじめをやめさせることもしなかった。

 先生たちの間でいじめの情報を共有し、被害生徒の話をきちんと聞いていれば、自殺は防げた可能性が高い。

 いじめの情報を早く見つけて子どもの命を守るため、4年前にいじめ防止対策推進法が成立した。たとえば、先生たちやスクールカウンセラー、弁護士などでつくるいじめ防止対策の組織をすべての学校に置くことを定めている。先生一人だけの力でいじめを防ぐのは難しい。さまざまな人たちで話し合いながら対策を練ることを重視したためだ。

 この法律は、「いじめられているかもしれない」という子どもに対して、学校側がすぐに事実を確認しなければならないとも決めている。このとき、被害者には「あなたは悪くない」とはっきり伝えることも大切だ。しかし、仙台市では、亡くなった生徒が逆に先生から、授業中に騒いだといった理由で体罰を受けていたことも明らかになっている。法律が定めた事実の確認や情報の共有ができず、学校側の対応がむしろ、生徒を追い詰めてしまった可能性がある。

「子どもはいじめを行ってはならない」。法律の第4条にはそうあるが、残念ながら、いじめは誰にでも起こりうる。法律だけで命を守ることはできないし、すべての大人が法律を理解して実践できるわけでもない。それでも、もし、いじめにあってしまったら、身近な大人に訴えて、話を聞いてもらうことがとても大切だ。

 いじめられてつらい思いをしている人は、まわりには話しにくいと思うかもしれない。けれど、いじめられている人は悪くないし、話を聞いてくれる大人も必ずいる。解決のためにも、一人で抱えこまないことが、なにより大事だ。(解説/朝日新聞社会部・根岸拓朗)

【キーワード:いじめ防止対策推進法】
子どものいじめを防ぐため、学校や国に必要な対応を定めた法律。まわりがどうみるかに関係なく、被害者が心や体に苦痛を感じることはすべて「いじめ」と定義する。いじめが自殺や不登校につながった可能性があれば、学校や教育委員会が「重大事態」ととらえて原因を調べることも義務づけている。

<いじめにあったら記録しよう>
・いつ
・どこで
・誰に
・何をされた?
・どうなった?
・どう思った?

※月刊ジュニアエラ 2017年8月号より

ジュニアエラ 2017年 08 月号 [雑誌]

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根岸拓朗
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