春になると軒先にツバメが巣をつくるという光景も、最近ではなかなか見られなくなったのではないでしょうか?
「幸せをもたらす」ともいわれるツバメですが、環境の変化によってその数も年々少なくなってきています。田畑での農薬の使用、住宅の変化など人間の暮らしが変わっていくとともに、少しずつツバメの暮らしも不自由に……。
そんなツバメですが、その生態はとても特徴的で興味深い生き物なのです。
体長わずか17㎝ほどの小さな体ですが、その体に秘めた驚くべき能力を紹介します。
驚異的な身体能力
渡り鳥として知られているツバメは、日本が冬の間は南国で過ごし、台湾、フィリピンなどで冬を越した後、春になると日本に戻ってきます。
日本から台湾、フィリピンまで……といってもその距離は2000~3000㎞ほども離れています。
あの小さな体で、遙か彼方までたどり着く身体能力は、まさに驚異的といっていいでしょう。
ツバメは平均時速40~50kmの速度で飛びます。意外と速いんです。さらに、外敵から逃げる時は、最大速度は時速200㎞にも及ぶというから驚きです! 時速200㎞というと、テニスの錦織圭選手のサーブに値する速さ。あの小さな体のどこに、それほどのスピード力が潜んでいるのでしょう。まさしく、自然の神秘ですね。
ツバメは迷わない?
しかし、約3000㎞もの距離を飛んでいるのに、迷うことなく寒い国、暖かい国を行き来することができるのはなぜでしょう? ツバメは昼の時間帯、太陽が出ているうちに目的地へと向かいます。その際、太陽の位置を目印に飛んでいるので、方角を把握することができるのです。
太陽の位置で方角が分かるというのも納得ではありますが、それだけで分かるの?という不思議さもあります。
ツバメの生態については様々な実験が行われていますが、山並みや海岸線など特徴的な地形に沿って飛んでいて、それをしっかり記憶しているという説もあるそうです。
とても器用なツバメの巣作り
暖かい時期になり日本にやってきたツバメは巣作りを始めます。カラスなどの外敵から守るため、安全な場所として民家の軒先などが選ばれます。巣は泥や枯れ草に唾液を混ぜて作られますが、約1週間で作ってしまうというから器用なものです。
日本で見かけるツバメは枯れ草などを利用しますが、ツバメの種類によって巣の作り方は異なります。中華料理で高級食材として知られるツバメの巣は「アマツバメ」という種類のもので、日本にいるツバメとは違うものです。
アマツバメの巣は唾液のみで作られているので、食材として利用することができるのです。
農家に喜ばれていたツバメ
ツバメは巣作りが終わると産卵、そしてヒナを育てます。親鳥はヒナたちにエサを与えるのですが、これが農家の人たちにとっては、たいへん喜ばしいことでした。ツバメのエサは生きた昆虫や幼虫です。これらは農作物にとって有害なものなので、ツバメが食べてくれることで駆除する手間が省けたのです。
また、ツバメのヒナが落とすフンが肥料になると歓迎する農家の人もいたそうです。しかし、近年では農薬の発達により、ツバメのエサとなる虫は減少。その影響でツバメの姿も少なくなってきています。
ツバメが巣を作り、ヒナを育て、また巣立っていく……。
昔は当たり前だった光景が少なくなっていくのは寂しいものがあります。かつてはツバメの存在に助けられていた人間ですから、これからはともに過ごしていける自然を守ることを考えていきたいですね。