自民党と公明党の関係に亀裂が生じ、20年以上続いてきた連立関係が揺らいでいる。自民党と公明党と対立のきっかけは、衆院選の区割り変更に伴う公認調整の問題だった。AERA 2023年6月19日号の記事を紹介する。
【図】接戦が多い東京の自民党衆院議員の2021年衆院選の結果はこちら
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24年間続いてきた自民党と公明党との連立が破綻の危機に瀕している。発端は衆院の選挙区割り変更に伴う公認調整。公明党側が東京都の選挙区で擁立する候補に自民党の推薦を求めたのに対し、自民党が応じなかった。公明党は、それなら東京都全体で自民党候補を推さないと反発、事態はこじれている。
この悶着の背景には、公明党の支持母体である創価学会の強硬姿勢に自民党側が対応できないという構図がある。自公連立のほころびは、政界の地殻変動につながる可能性も出ている。
まず今回の選挙区調整問題を振り返ってみよう。国勢調査結果に基づく衆院の定数配分の是正(10増10減)によって、東京都内の小選挙区は25から30に増加。これを受けて公明党は、現在の小選挙区1議席を2議席に増やすことを狙った。具体的には新設される29区(荒川区など)に小選挙区の現職を回し、同じく新設の28区(練馬区東部)で新たな候補を担ぎ出そうとした。
公明党は大阪府で四つ、兵庫県で二つの小選挙区議席を維持しているが、日本維新の会が勢力を拡大。この統一地方選で大阪府議会、大阪市議会ともに維新単独で過半数を確保した。これまで維新は、大阪府・市の運営のために公明党との協力を重視。衆院選では大阪府と兵庫県で公明党が候補を擁立した選挙区では維新の候補を立てなかったが、今後は公明党に対抗して議席を取りに行くという。公明党としては、関西で議席が減る事態も考えて東京などで議席を増やしたいのが本音だ。
自民党は29区を公明党に譲ることは認めたものの、28区は自民党の独自候補の擁立を進めているため、公明党には渡せないと回答。代わりに28区以外の選挙区2カ所を提示した。公明党は反発し、(1)代わりの選挙区は受け入れない(2)28区での擁立は断念する(3)29区で自民党の支援は求めない(4)東京都内の全選挙区で自民党候補の推薦は見送る(5)都議会での自民党との協力関係は解消する、という厳しい回答を示した。
公明党の石井啓一幹事長は自民党の茂木敏充幹事長と会談し、自民党への「非協力」は東京都に限定した措置であることを説明。茂木氏も公明党が新たに衆院小選挙区で擁立する埼玉県と愛知県の候補を自民党が支援する方針は変わらない考えを伝えた。公明党の山口那津男代表も岸田文雄首相(自民党総裁)との会談で両党の連立関係は今後も変わらないことを確認した。しかし、両党間に生じた溝は深く、自公連立は発足以来、最も深刻な危機を迎えている。(政治ジャーナリスト・星浩)
※AERA 2023年6月19日号より抜粋