撮影/伊ケ崎忍
撮影/伊ケ崎忍

 いろんなことに興味があって、片っ端から手を出すタイプなのかと思うとそうではなく、「どちらかというと面倒くさがり屋で、保守的なほうですね」と自己分析する。

「でも、昔っから退屈っていうのは知らないんですよ。『一日じっとしてろ』って言われたら、何の苦もなく一日じっとしていられる。座って固まったまんま、いつの間にか夕焼けになってても平気です(笑)。ただ、何かを観るとしたら、スポーツを観ますね。もし、若い頃に他の仕事を選べたとしたら、スポーツをやりたかった。あとは将棋か囲碁の棋士。どちらも才能がなかったんで、そっちの世界には行けませんでしたけどね。藤井聡太さんみたいのが出てくると、拍手をしたくなりますね」

撮影/伊ケ崎忍
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 さて、伊東さんが最後に伊藤博文を演じたのが2013年。10年ぶりの「その場しのぎ~」だが、今回の依頼については、「うれしかったですね。こんなジジイを引っ張り出そうなんて、よくそんなことを考えたもんだと」と言って「ハッハッハ」と豪快に笑った。

「初演からだとみんな30年、年を重ねてますけど、私なんかいちばん行っちゃってるから。ボケてたとしても、たぶん誰も『伊東さん、ボケてますよ!』とは言えないだろうし……(苦笑)。でも、いつまでもこういう緊張感を味わえるのはありがたいことだと思って、今回の台本も、初めて読むような気持ちで読んでます」

 伊東さんが三谷さんの脚本を好きな理由の一つは、お互い、「何も残らない笑いがいい」と考えているところだとか。

「喜劇には、感動も涙も啓蒙もいらない。ただおかしくて、ベタつかない笑いがあればいいと、僕は思っているんです。三谷さんも、劇場を出て、駅に着く頃には筋を忘れちゃうような、乾いた喜劇を作っていきたいと言っていて、そこはとても共感します」

撮影/伊ケ崎忍
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(菊地陽子 構成/長沢明)

※記事の前編はこちら>>「伊東四朗が語る三谷幸喜との出会い 信条を曲げて舞台に出たワケとは」

週刊朝日  2023年6月2日号より抜粋

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