竹増貞信/2014年にローソン副社長に就任。16年6月から代表取締役社長
竹増貞信/2014年にローソン副社長に就任。16年6月から代表取締役社長
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「コンビニ百里の道をゆく」は、53歳のローソン社長、竹増貞信さんの連載です。経営者のあり方やコンビニの今後について模索する日々をつづります。

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 やっとここまで来たか、という思いです。5月8日から、新型コロナの感染症法上の位置づけが「2類相当」から季節性インフルエンザなどと同じ「5類」に移行しました。感染者や濃厚接触者の外出自粛要請といった行動制限もなくなることになります。

 コロナが流行し始めた2020年から3年。今年の3月13日からマスク着用も個人の判断になりましたが、この3月に中学や高校を卒業した子どもたちの中には、式で同級生の素顔を初めて見た子もいたとか。それを聞いたとき、この3年は決して短い年月ではなかったと痛感しました。

 私たちローソンにとっては、訪れた大ピンチを大チャンスに変えていこうと模索した3年間でした。その時に大切にしたのは、大ピンチだからこそ自分たちの原点、コアな存在意義にもう一度戻ること。

 コロナ禍という変化に対して、じゃあ我々がどう変われば、自分たちの存在意義が確かなものとなり、「私たちは“みんなと暮らすマチ”を幸せにします。」という企業理念を実現できるのか。

コロナ5類移行を前に観光客が戻ってきた大阪・道頓堀=4月14日、大阪市中央区
コロナ5類移行を前に観光客が戻ってきた大阪・道頓堀=4月14日、大阪市中央区

 最初は全国の店舗に生鮮野菜を置くチャレンジからでした。その後もデリバリーを充実させたり、「ご飯はお店で炊いた方がいいのでは」と店内厨房を9千店舗以上に拡大したり冷凍食品を拡充したり。

 コロナの前だったら「できない理由」がまず出てきてしまって、なかなか前に進めることができないアイデアでした。でも大ピンチを前に、「お客様の変化に対応する」ために何かやらないと私たちの存在意義が問われてしまうぞ!というところまで来ると、「ルールは後から。とにかくやれるところからやろう」で、できてしまうものなんです。

 大きな危機に対しては、もういちど自分たちの原点に戻って。そして一生懸命に努力すれば、全員の大きな成長につながる。そのことを実感した3年間でもありました。

竹増貞信(たけます・さだのぶ)/1969年、大阪府生まれ。大阪大学経済学部卒業後、三菱商事に入社。2014年にローソン副社長に就任。16年6月から代表取締役社長

AERA 2023年5月15日号