ここ最近、業態の“リバイバル現象”が見られる。例えば「便利屋さん」だ。困った時に電話すれば、家事代行やモノの運搬、家のちょっとした修繕、電話番から犬の散歩まで、何でも引き受けてくれる。多忙な都市社会で登場した現代的ビジネスに見えるが、実は意外と歴史が古い。交通・通信手段が未発達な時代には、物資の配達や伝言が主なサービスだった。江戸時代にはすでにあったようで、明治・大正時代にはかなり活躍していたという。

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 江戸時代から続く「御用聞き」も、かつては多くの商店がおこなっていたサービスである。お得意さんの家を戸別に巡回して,「チワ、奥さん。今日は何かご入り用のものは?」なんて言って商品の注文を取っていた。昭和期、あるいは、それ以前の時代を描いたテレビドラマにも見られた光景だろう。

 そして数年前から、大手コンビニも御用聞きサービスに乗り出している。電話一本でコンビニ商品の弁当やお総菜を届けてくれたり、自宅に注文を取りに来てくれたりする。先頭を切ったのは、セブン-イレブンだった。2012年にお届けサービス「セブンらくらくお届け便」を開始。食事の配送に加えて店舗内の商品も扱っており、超小型電気自動車や、電動アシスト自転車などを使って配達している。

 急速な高齢化、商店街の衰退、“買い物難民”の増加を背景に発掘されたサービスといえるだろう。ローソンもまた、類似の試みを始めるようだ。スタッフが自宅を訪問して注文を受ける「御用聞き」と宅配サービスだ。タブレット端末を利用して食事の配達時に注文を聞き、最短で翌日の配達時に届けるという。ローソンの商品にとどまらず、オンラインストア「Amazon(アマゾン)」と手を組み、その商品も取り扱う予定だとか。古典的サービス“御用聞き”とIT技術の結合である。

 こうしたコンビニのサービスも、身近なところで日常生活に必要な物資万般がそろう「よろず屋」の現代版だろう。人々の生活には時代を超えて普遍的なニーズとなるものが潜在し、それがあるとき顕在化する。そして、その時代に適合する装いを凝らしてビジネスに結実するのではないだろうか。現代は、IT技術がここに新たな可能性を開きそうだ。

 一方、ロボットの技術も目覚ましく進化している。「搭乗型移動ロボット」が開発された。人を乗せて時速10km程度で走ると同時に、「速度制限」「搭乗者および周囲への注意喚起」の2つの安全機能を搭載して人間の移動をサポートしてくれる。高齢者には大きな助けとなるだろう。

 さて今度は、この技術が現代版“御用聞き”と融合するだろうか。そうなれば、人ではなく、ロボットが御用聞きに回るというような時代が来るかもしれない。あるいは、搭乗型移動ロボットで高齢者の外出が増え、御用聞きはもう必要なくなるかもしれない。果たして、どちらの未来が待ち受けているだろうか。