直近では、2022年に尚志高のチェイス・アンリがシュツットガルトに入団し、2023年には神村学園高の福田師王がボルシアMGに入団。2年連続で高校ナンバーワンと言われたDF&FWが、Jリーグを経ずに直接、海を渡ったが、彼らが成功例のない過去を覆すことができるか。

 Jリーグが現状の「ABC契約」を維持する限り、高校生、大学生の有望選手が国内外を含めた争奪戦となった場合、欧州クラブのオファーにJクラブが金銭面で上回ることは難しい。だが、三笘薫がユースから大学、Jリーグ、ベルギーと一歩ずつ段階を踏みながら進化を遂げ、10歳でスペインに渡った久保建英も“強制帰国”後の日本でのプレー、Jリーグでの経験が、現在の成熟へと繋がった点は見逃せない。

 日本サッカー界としても自国の才能は大切に育てなくてはならない。日本代表がW杯で“まだ見ぬ景色”を見るためには、選手たちの早期の海外移籍は必要であり、今後も高卒、大卒での即、海外移籍を決断する選手は増加していくことだろうが、それによって失うものも少なからずある。Jリーグの在り方、制度も含め、今一度、考え直す時期にあるのは間違いない。(文・三和直樹)