●~ボクシングへの興味と理解度を高めたい

 アベマは他スポーツで培ったノウハウも生かし、ボクシングを含めたファイトスポーツ中継の進化を目指している。視聴者にとっては迫力ある戦いを見ることに繋がり、競技自体への興味や理解度も高まるはずだ。

「将来的には独自のシステム、ソフト開発、AIによる判断等を用いて、正確に映像を確認できるようにしていきたい。サッカー中継では実現し始めている部分です。W杯・カタール大会での『三笘薫の1mm』は、中継技術の進化が可能にした部分もあるのではないかと思います」

「ボクシングでもポイント、バッティング、スリップ等が様々な角度、可能なら360度全てから確認できるようになれば良い。判定はもちろん、競技自体への理解度も深まるはずです。三笘の件で多くの人が『ラインを割る事の意味』を知りました。同様のことがボクシングでも可能です」

「予算の問題もありますが、様々なカメラを導入して台数も増やせれば。天井から吊るすもの、入場を撮るクレーンやレールの上を走るもの、色々あります。中継に変化や彩りが加わりますし、VTSに使えるものもあるはずです」

 中継の進化のため、3150FIGHTでは他にも新たな試みがなされていた。リング中央上部に集音マイクが吊るされ、臨場感ある「戦いの音」を伝えることにも成功した。

「迫力あるライブ中継をするには音も必須。海外のボクシング映像では、生々しい打撃音が映像越しに伝わってきます。実際に会場で見ているような感じ。これは集音マイクが選手の真上にあるからで、日本のボクシング中継ではあまり見かけない光景です」

「VTS導入への対応を進めながら、米国へボクシング視察に行きました。現地では大会ファウンダー・亀田興毅氏と共に試合を見る機会に恵まれたので、マイクの導入を相談しました。大会当日は選手の邪魔にならないよう、マイクの高さなどに気を使いました」

 ボクシングは人と人が素手に近い状態で殴り合う、ある意味で最も原始的な競技。長い歴史の中では不可解な出来事も多かった。しかし時代は変化しテクノロジーを活用できるようになっている。

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VTSがボクシング界を変える?