読んでると「町内会なんか殲滅してしまえ」と思う。
 著者の紙屋さんは、流れでなんとなく町内会長になり、その「町内会長体験談」をもとに、町内会の役割や利点、町内会の困ったところ、今後の町内会がどのように運営されていくのがいいのか、といったことを書いています。
 紙屋さんは夫婦共働きで、夫である自分が育児や家事を担当している。大学時代は自治会活動などもしていて、こういう活動についてはある程度の意義も認めている。第一章では、町内会というものが、地域についてどのような役割を果たしているのかが丁寧に説明されていて、そのへんはまあ、ふつうに読み流す。
 しかし二章以降になって、町内会長になった紙屋さんが蒙った面倒について具体的に書いてあるところが、もう異様に面白い。校区の行事や打ち合わせに動員要請がかかりすぎてそれ自体が負担なので、出なくていいと判断して欠席するとする。ちゃんと町内会の会員にも意思を確認して(それ自体がまためんどくさいのだが)欠席しても、町内会長会議みたいなところで吊るし上げを食らう。真ん中にいてほとんど恫喝のように吊るし上げをしてくるのは「話のわからないオヤジ」だ。紙屋さんは自治会長をやめる決心をする。このあたりが「町内会は殲滅しろ」と読みながら思うところだ。
 しかし紙屋さんは良識の人なので殲滅論など唱えず、「ゆるい町内会組織」を提案するのだ。今の町内会では役を担う人はイヤイヤながらだ。役員になった人はやらない人に腹をたてる。やらない人は、やってる人の仕事を「やらなくてもいいような仕事」だと思っていて軽く見る。この悪循環ではいずれカタストロフがやってくる。それを避けるための「義務もない、やりたい人だけがやる組織」だ。全国、さっさとそうすればいいと思う。こんなアイデアはきっと今まで何回も出ているだろう。でもそうならない、というところに町内会のやっかいさがあるのだろう。

週刊朝日 2015年1月16日号