新郎新婦の誕生から幼少時代、2人の出会いから初めてのデートなどを、写真や再現VTRで、ときにはコミカルに、ときには感動的に紹介……。

 ジューン・ブライドのこの時期は結婚式に呼ばれる人も多いと思うが、一度くらいはこういった映像を目にしたのではないだろうか。

 最近の披露宴で良く見られるこういった映像演出。まれに個人で制作する人もいるそうだが、ほとんどの人は制作会社を利用しているのではないだろうか。制作会社に依頼した場合、映像を収録したDVD制作までがワンパッケージとなっていることが多い。

 ところが、楽しみにしていたDVDを受け取って見てみると、何かおかしい。よく見てみると、会場で上映されていたときに使われていたはずの音楽が全く別の曲にさしかえられているのである。

 一般社団法人音楽特定利用促進機構(ISUM)が20代から40代までの新郎新婦800人に対して行ったアンケートによると、式場や専門業者に制作を依頼した映像演出のCD や DVD のBGM がどのようになっていたかを尋ねたところ、「披露宴とは別の曲(オルゴール曲や著作権フリーの曲)に変わっていた」あるいは「BGMが削除されていた」という回答が11%を占めたという。

 いったいなぜ、このようなことが起こってしまうのか。そこには、落とし穴があったのである。

 式で上映した映像をDVDにするには音楽を複製して使う事になるのだが、その際、BGMとして使用した音楽については、その音楽の著作権・著作隣接権の権利者に、あらかじめ許可や承認を得る必要がある。そのため、式場や制作会社では、許可や承認を得ていない人からの依頼の場合、音楽を勝手に使えないため、全く別の曲に差し替えるなどの処置をしているのだ。

 さらにこの調査では、著作権・著作隣接権の権利者に許可・承認を得る必要を知っていたかどうかを尋ねており、70.5%が「知らなかった」と回答した。また、楽曲をコピーしてDVDなどを作成した際、著作権・著作隣接権の手続きはどのようにしたかを尋ねたところ、63.3%が「手続きをしなかった」と回答した。

 著作権問題は厄介であり、著作物利用の手続きも個人では非常に面倒である。とはいえ、一生モノのDVDを台無しにしないためにも、著作権フリーの曲を使ったり、どうしても使いたい場合には面倒でも手続きを行ったり、式場や制作会社と相談したり、綿密な計画が必要なのかもしれない。

 この調査を行ったISUMは、披露宴会場や映像演出の制作会社を通して、著作物の利用に関する煩わしい手続きを一括で請け負っている。同団体を介せば、個人が各レコード会社と個別に契約を結ぶ必要がなく、莫大な使用料を請求される心配もないという。現時点で利用可能な曲はISUMのウェブサイトに記載されており、リクエストして追加してもらうことも可能である。お気に入りの音楽を使いたい場合には、一度相談してみてはいかがだろうか。