今年も国内で、様々な人たちが日夜ニュースを賑わしています。なかでもソチオリンピックでの浅田真央さん、STAP細胞の小保方晴子さん、そして兵庫県議員の野々村竜太郎さんと、良し悪しはあるものの、「泣く人」が話題になることが多い年だと言えるのではないでしょうか。

 人気エッセイスト・酒井順子さんの『泣いたの、バレた?』には、こうした今年話題となった泣いた人たちを例に挙げた、涙を巡るエッセイも収録されています。



 エッセイの中で酒井さんは、真央ちゃんと小保方さんの涙を比較します。



「真央ちゃんの涙とオボちゃんの涙は共に大きな話題となりましたが、その受け止められ方は、ずいぶん違ったようです。真央ちゃんの涙には日本中の老若男女が感動したのに対して、オボちゃんの涙への好感度には、男女差がくっきりと見られたのです」



 小保方さんの涙は、おじさま受けは良いけれど、女性からは支持されないものだったと酒井さんは言います。ではなぜ小保方さんの涙は、女性から嫌われる涙となってしまったのでしょうか。酒井さんは、その大きな原因として、小保方さんが「女性の視線管理」に慣れていなかったことを挙げ、彼女の育ってきた環境に目を向けます。



「オボちゃんというのは、高校も共学、そしてワセジョでリケジョという、女性が少ない環境で生きてきた方です。だからこそ、『女です!』というアピールをすれば絶大な効果が返ってくることを、よく知っている」(本書より)



 小保方さんはこうしたことを知っている一方、「そのような処方を無邪気に使用する女性に、同性は厳しい」という女性からの視線、その管理の仕方を知らなかったのではないかと指摘するのです。その上で、もしも女性からの視線を意識し、支持を得たいのであれば、メイクを崩さずに泣いた会見時の格好も「明らかにプロの手によるハーフアップの巻き髪、ワンピースにパールネックレス」という女性的なものではなく、「多少ほつれ気味のひっつめ髪に化粧っ気の無い顔、地味なスーツ」といったものにすべきだったと酒井さんはアドバイスします。



 女性の涙が同性に好感度を持って受け入れられるか否かという問題。男性のみならず女性からも支持を得る事のできる涙を流すのは、非常に難易度の高いもののようです。なるべく人前では下手に涙を見せない方が賢明なのかもしれません。



 本書は、この他にも2013年5月から2014年5月にかけて「週刊現代」に連載された、合計48本もの興味深いエッセイの数々が収録されています。