飲食店の苦境が伝えられるたび、心がチクチクする。学生時代に通ったあの店は元気に営業しているだろうか。そう感じるのなら、すぐにも訪ねてみよう。思い出の味があなたを待っている。
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■OBが現役学生の飲み代を置いていく“伝統”
・源兵衛(東京・早稲田)
縄暖簾(なわのれん)をくぐって次々と客が入ってくる。取材当日は早稲田大学応援部OB8人の飲み会だった。
創業した昭和元年から早大関係者に愛されたこの店の店主・宮田彦一郎さんによると、「応援部のOBの方の中には帰り際に“これで後輩たちを飲ませてやってくれ”ってお金を置いていく人がいる。一時期は現役の応援部員はお金を払わずに飲めたほど」と笑う。
店には現役の大臣や検事総長も警護なしでフラリと訪れる。「ここでは大企業の社長だって、先輩に“タバコ買ってこい”って言われたら使い走りです」(店主)
社会的立場を忘れて、学生時代に戻れる場として愛されている。
東京都新宿区西早稲田2-9-13/営業時間:16:00~24:00/定休日:3日、13日、23日
■4代目店主が感じた古今の東大生の違いとは
・食堂もり川(東京・本郷)
卒業式に参列後、息子に連れられて来店した母親に、「4年間、子供がこういう食事をしていたとわかって安心した」と言われる。食堂もり川はそんな店だ。
東大赤門から徒歩3分。丼ものから定食まで、日替わり定食以外には煮物などの小鉢がつく。「栄養バランスも考えて提供している」(4代目店主)というとおり、客の栄養と健康を支えてきた。
この店で40年間、学生を見てきた店主は「たくさん食べてもらいたいから、ウチのご飯は1杯300グラムと多めにしてるけど、最近は“半ライスで”って言う学生さんが多い。昔はみんな大盛りだったのに」と少し寂しそうに笑った。
東京都文京区本郷5-30-16/営業時間:11:00~14:00、17:00~20:30定休日:日(祝不定休)