(撮影/原田和典)
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(撮影/原田和典)
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 このところ毎日、心の中がカウントダウン状態である。
 除夜の鐘が百何十回鳴ろうが、こんな気持ちになったことはない。とにかく、6月1日がやって来るのが楽しみでしようがない。と同時に、「いつまでもこのわくわくした気持ちのままでいれたら……」という思いも、ほんのわずかだが、ある。旅行に出る前、湯船や寝床で計画をあれこれ練っているときが実は一番楽しいのと同じことだ。

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 6月1日、アップアップガールズ(仮)は中野サンプラザの舞台に“単独で”立つ。この快挙がAKIBAカルチャーズ劇場で発表された2月2日の午後から、ぼくにとって中野サンプラザは別名“アプガスタジアム”になった。公演開催後はたぶん、もう、そこらじゅうが改名されまくりのはずだ。東中野は“東アプガ”、中野坂上は“アプガ坂上”、そして中野ブロードウェイは“アプガブロードウェイ”に。メンバーはもちろん最高のステージで(といっても、アプガには最高以外のパフォーマンスは存在しないけれど)、超満員のオーディエンスを魅了し、魅惑し、熱狂させてくれるに違いないが、ファンとしても自己ベストを更新するぐらい、命を捧げるぐらいの強く熱い意気込みで声援を送るはずだ。双方の気迫と愛が真正面からぶつかったとき、オーディエンス2222名+メンバー7名の前に、誰だって一度も体験したことのない世界が沸きあがるに違いない。

 2月2日以降、ぼくも何度か中野サンプラザに足を運んだ。なかでも出色だったのがマイケル・シェンカーのライヴだ。スコーピオンズ、UFO、MSGのナンバーをバランスよく織り交ぜた内容で、観客から何度も大合唱を引き出していた。いい感じで会場を暖めていた。アプガ登壇への体勢は整った、というところだろう。

 中野公演に先駆け、アプガは約2カ月かけて「アップアップガールズ(仮) 1st全国ツアー アプガ第二章(仮)進軍~中野に向かって~」と題するツアーを開催中だ。この原稿を書いている時点で14公演中12公演が終了している。アプガはまず、昼ごろにその土地のショッピングモール等の特設会場で「全国(仮)化作戦~2014春の陣~」と題するキャンペーン(ミニライヴ+握手会。観覧は無料)を行ない、夜ないしは夕方に熱狂的なワンマン・ライヴを2時間以上にわたって繰り広げる。初日は忘れもしない、3月21日の名古屋だった。ぼくは前日、広島で「Perfume FES!! 2014」を見て(西脇姉妹の歴史的な共演が実現した)、翌朝ねぼけまなこのまま「春の陣」の会場である「名古屋近鉄パッセ店 屋上イベントスペース」へ向かった。風が強く若干肌寒かったが、空は見る見るうちに晴れわたり、アプガのパフォーマンスに時を忘れていると、いつしか寒さも忘れてしまった。名古屋地区エリアマネージャー(仮)である関根梓はこの日、「春の陣」でもライヴ本編でも、もしゃもしゃした髪型で新たな魅力を発揮していたが、翌22日の大阪公演以降は、それをやめてしまったので、名古屋でアプガを見たファンは本当に貴重な瞬間を目撃したことになる。ライヴ本編では途中、メンバーが単独でMCをするシーンがある。22日のひとりMCは、関西大阪地区のエリアマネージャー(仮)である佐藤綾乃が担当。“ひとりだと緊張する”ということで、タワーレコード梅田NU茶屋町店に設置されている「アプガビリケン」を抱えて登場した。まったく役得なビリケンさんだ。

 23日の「春の陣」会場は、神戸「ミント神戸2階デッキ特設ステージ」。ひらたくいえば、“神戸を代表する大きなデパートの入り口で公開ライヴをした”ということだ。天気は良かったが風がやたら強く、寒かった。しかしアプガはこのツアーから着ている“アスリート衣装”でガンガン歌い、踊る。決して広いとはいえない(6畳ぐらいか?)板の上で、モニターもイヤモニもない中で、よくあれほど鮮やかな歌とダンスができるものだ。プロとしての根性の座り方が、とんでもないのである。このときの音響は、どういうわけかやたら低音が利いていて、《Party! Party!》のベース・ラインがことのほか気持ちよかった。夜のライヴ会場「Kobe SLOPE」は、少し前まで「ウィンターランド」という名前だったところ。この公演あたりから、森咲樹の“すべり芸”に一層の磨きがかかってきた。《Burn the fire!!》の“あの日からその目が~”以下のパートを関根梓が歌ったのは、たしかこの日だったか。

 4月5日の「春の陣」は、盛岡市の「イオンモール盛岡南 1Fセンターコート」で開催。駅からバスで15分ぐらいだ。外は雪、猛烈に寒い。開演少し前、岩手を拠点とするアイドル・グループ“チャーマンズ”のリーダーが見学にやってきた。チャーマンズとアプガは、3月9日の「ジモドル フェスタ2014 WINTER」で同じステージに立っている。ぼくは《愛しのエイリアン》や《MY HERO》をそのときに聴いて“なんてポップでメロディアスなんだ”と感激しCDを買い、井の頭公園のイベント「SEA級グルメカーニバル」にも出かけてさらにチャーマンズのファンになったばかり。そのメンバーが自分の真横でアプガを見ているという状態は、「奇跡的」のひとことに尽きる。アイドルを見るアイドルを横に見ながらアイドルのイベントを見ることが、今後の人生、果たして何度あるだろう。夜のライヴは「CLUB CHANGE WAVE」で行なわれた。「ここまで近くでアプガのライヴを楽しんだことがあるだろうか」と自問自答したくなるほどの近い距離。こんなにそばで見ることができるのも、遠征の醍醐味だ。また「サマービーム!」における新井愛瞳と関根梓のやりとりは、この日あたりからアドリブで展開されるようになったと記憶する。

 翌6日は、仙石みなみの出身地・仙台でのパフォーマンス。ライヴ会場となった「仙台Renca」でのひとりMCも、当然、仙石みなみ。毎度ながら、その豊かな発想と言語感覚には驚かされる(いつだったかのユーストリームでの《オシャレンティ》、《ジェントロマン》にも、しびれた)。いつもよりもさらに、彼女のイメージカラーである赤のTシャツを着たファンが多数つめかけ、場内は真紅のバラが咲き乱れたかのようだった。

 シングル《(仮)は返すぜ☆be your soul/Party! Party!/ジャンパー!》の発売(4月9日)とリリイベをはさみ、ツアーが再開されたのは20日。場所は札幌・琴似の「ペニーレーン24」だ。もう雪はさすがに降っていないとはいえ、そこはやはり北海道。相当に肌寒い。しかしそれは外だけ。場内はファンの熱気とアプガの気迫で沸騰寸前だ。しかも、北海道地区のエリアマネージャー(仮)は、熱さに定評のある古川小夏である。よって、ひとりMCも彼女自身が担当。「エリアマネージャー(仮)なのに、あまり北海道に来られなくて……。これからはもっと来ることを約束します」というようなことを、ユーモアを交えつつエモーショナルに伝えた。アプガの7人が揃って札幌に来るのは、昨年3月のフルーティー公演へのゲスト参加以来で、単独公演は今回が初めて。古川小夏をはじめとする全メンバーにとっても、道産子ファンにとっても、まさしく待望の宴がこの夜に実現したのだ。仙石みなみ、古川小夏、佐藤綾乃、佐保明梨、関根梓は翌日、「HMV札幌ステラプレイス」で「春の陣」を行なった。握手会スペースの下手側が洋楽コーナーだったので、ぼくが携わったソニーのCDシリーズや、コーナーを担当している小学館「JAZZ100年」(隔週火曜日発行)の陳列と、アプガの握手姿が期せずして並ぶことになり、どうしようもなく嬉しくさせられた。

 北海道の次は九州だ。4月27日の日曜日。この日、アプガ、田中れいな(元モーニング娘。)率いる“LoVendoЯ”、田﨑あさひと長谷川萌美が組んだ“Bitter&Sweet”は、いずれも福岡にいた。ファンの間では早くから“飛び入り共演があるのでは?”と噂されていたが、喜ばしいことに、それは実現した。まず「DRUM SON」における“LoVendoЯ”と“Bitter&Sweet”の公演にアプガが乱入し、その後、「DRUM LOGOS」で行なわれたアプガ・ライヴに“LoVendoЯ”と“Bitter&Sweet”が乗り込んだ。ぼくは飛行機の都合で後者しか見ていないが、先輩の田中れいなを前にしたアプガの緊張ぶりは相当なものであった。しかし自身のパフォーマンスになると、いつも通りワイルドでピースフルなアプガに戻り、怒涛の歌とダンスで会場を熱狂させていく。後ろに吊り下げられた「(仮)幕」(※昨年の夏ツアー以来、いろんな会場に持ち込まれている)も、思いっきりなびいていた。

 29日は、本「DRUM Beー9 v1」で公演。ここでは九州地区のエリアマネージャー(仮)である新井愛瞳のひとりMCを聴くことができた。それに先立つ「春の陣」は、午前11時半から「蔦屋書店熊本三年坂店 1Fモリコーネテラス」で開催されたが、歩行者天国沿いにステージがあるので、曲が始まると「なんか賑やかだな。何をやっているんだろう?」という感じで、老若男女が音のするほうに近づいてくる。九州はLinQ、HKT48、いま話題のRev. from DVLなど、地元アイドルの層がハンパなく厚い。いくら実力と体力が抜きん出ているアプガとはいえ、そこに斬りこむのは並大抵のファイトではすまないだろう。しかしアプガは着実に、地元のファンの心を掴んでいる。それを実感できた九州シリーズであった。

 5月最初のツアーは、四国シリーズから始まった。4日の舞台は、松山「サロンキティ」。昨年、アプガはここに“ひめキュンフルーツ缶”との対バンで出演している。その模様はアプガ部分のみDVD「アップアップガールズ(仮)対バン行脚(仮)~Official Bootleg?BOX~」で見ることができる。単独公演で四国に戻ってきた喜びを隠せないアプガ。もちろんステージは爆裂そのものだ。《サマービーム!》後半、新井愛瞳と関根梓のやりとりでは、愛媛今治のゆるキャラ「バリィさん」の名前も登場した。こうした“その日限定”のフレーズが出ると、オーディエンスは一層、盛りあがる。翌5日は高松「MONSTER」に舞台を移しての開催。ぼくは松山駅前から出る「坊っちゃんエキスプレス」というバスで移動したのだが、車中のアプヲタ率の高さは感動的なほどだった。ぼくらアプヲタが、「春の陣」会場であるショッピングモール「高松丸亀町グリーン」内の野外特設会場に到着した頃、アプガのリハーサルは佳境に入っており、ほとんど午前11時きっかりに「春の陣」が始まった。天気はいまひとつだったが、アプガのパフォーマンスは相変らずの切れ味を維持。おかっぱ頭の子供が満面の笑顔で踊っていたのも、実にうれしい光景だった。もちろん「MONSTER」でのステージも気合い入りまくりで一瞬一瞬が圧巻!

 5月10日の「春の陣」は、タワーレコード広島店での開催。広島地区エリアマネージャー(仮)の森咲樹にとっても、待ちに待った機会であったろう。このイベでのポイントは、「アップアップタイフーン」。新井愛瞳はライブで通常、“タオルぶん回して~”以下のパートをCDどおりには歌わない。簡単にいえばシャウト気味に声を張り上げる。それがまた“ライブ映え”するのだが、しかしこの「春の陣」では、フェイクなしで歌っていた。アプガは生歌集団なので、そのときの演者のフィーリングが率直にサウンドに反映される。これも実演の醍醐味だ。「CLUB QUATTRO」でのステージも言葉を失うほどの迫力だった。もはや肉体芸術というべきパフォーマンスの連続、その間に挟まる、ゆるく楽しいMC。宮島でのエピソード(佐保明梨が“鹿使い”である、など)、森咲樹の一発ギャグ等、もう「あらゆる表現者にアプガの実演を見てほしい」と思った。「ENJOY!! ENJO(Y)!!」の、CDでいうと3分05秒目ぐらいのところで、佐藤綾乃がいきなりスキャットを始めたのにも驚かされた。エモーションが抑え切れなかったのか。そのくらい乗りまくっていたわけだ。

 11日は倉敷市「アリオ屋外イベントスペース」で「春の陣」。雲ひとつない青空だ。アプガが歌っている広場で、ファンが熱狂し、家族連れが通りすがり、犬が吠え、おもちゃの蒸気機関車に乗った子供が行き交う。なんて心地よい光景だろう。本公演は岡山市の「CRAZYMAMA KINGDOM」にて。MCの主なテーマは「もしアプガが桃太郎をやるとしたら」。桃太郎役には「桃はピンク色。だから私」と主張する古川小夏、「桃太郎は鬼退治するから侍魂の私」と仙石みなみ、「私がやると桃太郎じゃなくて“森太郎”」と森咲樹が立候補した。そのうち「きびだんご役は誰か?」という話に移り、関根梓は「(きびだんごは)セリフがないからいやだ」と拒否。セリフがあればきびだんご役でもいいのか、「もの」だぞ、という疑問はさておき、犬・サル・キジ・鬼に誰が扮するかについての話は一切、出なかったと記憶する。桃太郎ときびだんごだけで綴られる「桃太郎」……どんな内容になるのだろうか。想像は限りなく膨らむ。[次回6/23(月)更新予定]

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