AERA 2023年3月20日号より
AERA 2023年3月20日号より

 その一方で聞かれるのが、前出の田村さんのように、転職や再就職に高いハードルを感じる声だ。結婚・出産後の就職活動について調査した結果では、「就活が難しい」としたのは92.6%で、理由の筆頭には「家庭と両立できる仕事が少ない」(78.1%)が挙がった。

「中途採用は、基本的に即戦力で、正社員ならば突発的な残業にも対応できる人材が求められる傾向が強い。特に時短勤務希望ともなれば、はなから採用対象に見られないケースが多く、転職・再就職におけるハードルは、非常に高いものがあります」

 こう話すのは、ワーキングマザーの雇用問題について詳しい第一生命経済研究所の福澤涼子さん。特に正社員として転職・再就職する場合、ある程度の残業や突発的な対応ができる前提でないと、採用に至らないケースが少なくないのが現実だ。

■女性を雇う“余力”ない

「家事や育児は女性の役割という価値観はいまだに根強く、仕事と家庭の両立までは何とかできても、“活躍”するまでには高い壁がある」(福澤さん)

 企業側の本音としては「結婚や出産などで、辞めたり休んだりされるのは困る」という声も聞かれる。

<批判覚悟ですが、私は、寿退社や産休や育休をされると困るので、若い女性は正社員として雇用してません>

 今年2月には、大阪で二つの会社を経営する、ある女性社長のツイートが波紋を広げた。<本音は雇ってあげたいし心苦しいのだけど、うちのような弱小企業では雇う余力がありません>と続けたツイートには、批判も多く集まった一方、共感や賛同の声も多数寄せられた。

 企業が若い女性を採用したがらない理由の一つに、入社しても結婚や出産などで辞めてしまうのではないかという懸念がある。特に中小企業にとっては、産休育休に対応できるだけの余裕がないところも多い。また企業としては「採用=投資」であり、人材定着という観点で見れば、男性に軍配が上がる傾向が強い面もある。男女間雇用格差の問題に詳しい周燕飛(シュウエンビ)教授(日本女子大学)は言う。

「女性が結婚や出産を経ても、長期的なキャリアを築けるような体制を企業側が作っていかないと、男女平等とはいえない。共働き世帯が専業主婦世帯の2倍以上になった今、専業主婦モデルが共働きモデルに取って代わられたという見方もされていますが、それは大きな誤解。なぜなら共働き世帯の半数以上は、主婦の役割を果たしながら、空いた時間で働いている“準専業主婦”ともいえる働き方です。その意味で、夫婦共にキャリアをあきらめない“共キャリア”が築けるかどうかが大きな境目になってくるのでは」

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