自らのブログに「単なる絶叫戦術はテロ行為とその本質においてあまり変わらないように思われます」などと書き、大反発を買った自民党石破茂幹事長。特定秘密保護法案を通したいという下心があるとはいえ、真意は奈辺にあるのだろうか。
 今年6月に出版された著書『真・政治力』の中で、石破氏は「党改革の指針」のひとつとして〈永田町、霞ヶ関から出て、広く国民の声に耳を傾ける自民党になる〉ことを挙げている。なんだ、わかってんじゃんと思いきや、〈若い頃は、本当にいつも地元である鳥取に帰っていました〉。氏にとって〈国民の声に耳を傾ける〉とは選挙区の収穫祭などのイベントに顔を出すことなのだ。
 一方、氏の市民運動に対する感覚は菅直人元首相を評した言葉に表れている。〈菅総理はすべて「反対、反対」と叫べば済んだ市民運動家の体質を引きずって、日本のトップに立ってもまだ「反対」と言えるターゲットを探していたのでしょう〉。氏にとって、市民運動とは〈すべて「反対、反対」と叫べば済〉む無責任な人々の群れなのである。
 いかにも自民党の政治家らしい発想。これじゃあデモとテロの違いが理解できないのも道理だわ。
 とはいえ石破氏にも政治家としての信条はある。それは〈「親切、丁寧、正直」を心掛け〉ること。〈今までわれわれ政治家は、自分が嫌われることを極端に避けてきたのだと思います。でも、嫌われたっていいのです。国民に本当に伝えなくてはいけないことは、どんなに耳が痛い話であろうと、どんなに自分が嫌われようと、政治家が責任を持って正しく伝える必要がある〉。「デモはテロに等しい」という言葉は、たとえ国民に嫌われてもぜひとも伝えなければならない真実だったのだな。
 石破騒動の後、参院議員会館前のデモに参加した女性の手には「このだらず(馬鹿者)が! おめえは鳥取の恥だ!」と書かれたポスターがあった。嫌われてもいいと公言する幹事長。さぞや本望だったことだろう。

週刊朝日 2013年12月20日号

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