――小さいころからカメラになじんでいましたか。
子ども時代はカメラはすごい贅沢品。今みたいに誰でも持てるものではなかったんです。親戚のお兄さんが1台持っていて、写真を撮ってあげると言われると家族中が大騒ぎでした。あとは年に1回、写真館で家族写真を撮るくらい。自分で持つようになったのはカナダに留学したとき(76年)。ずっと撮られる側でしたから、カメラデビューはずいぶん遅い(笑)。
本格的に目覚めたのは、79年に香港の芸能界にカムバックして中国に行ったのがきっかけですね。オートフォーカスのカメラをメーカーの方が貸してくれたの。見た目はごつかったけど説明を聞いて、「おお、これなら私でも撮れそう」って(笑)。それから、いいカメラがほしいと思うようになった。
EOS kissIIIや30Dは発売のときに買いました。何を撮ってもきれいに写るし、ズームや連続シャッターの機能も優秀。
ただロケ先では自分が撮られる機会も多いから、いつも大きいカメラを持ち歩くわけにはいかないんです。結局、大きいカメラは同行している夫か、最近ボランティアでついてきてくれる長男にお任せ。私はコンパクトカメラをポケットに入れて、撮りたいときにパッと撮っています。カバンに入れていたら間に合わない。
――機種は何ですか?
キヤノンのパワーショットS500。落としてへこんだり、キズがついたりしてるけど、ほかのものを使う気にならない。理由は、まず充電が早くできて充電器がコンパクトなこと。旅先で使うときは、どちらも本当に大事です。データ容量が多いのもいいですね。といっても自分で買ったんじゃなくて、じつは夫からとりあげたの(笑)。
いろんな機種を試したけど、これが私の要求にいちばん合っていた。難民キャンプや被災地を訪問するようになってから、現地の子どもたちを大勢撮ってきましたが、このカメラを使うと子どもの顔がとてもよく写る。とくに肌の色がきれい。撮りたい瞬間をちゃんととらえてくれるのもうれしい。
大きいカメラだと、シャッターの時間差で失敗することが多かったんですよ。子供はくるくる表情が変わるから急いで押しても、「あっ、もう別の顔になってる!」ってことが何度もあった。先日、四川大地震の被災地を訪問した際もこのカメラが活躍しました。
今回、中国政府から「被災地の子供たちの心のケアを手伝ってほしい」と初めて日本ユニセフに要請が来て、大使を務めている私に声がかかったんです。中国政府じきじきの依頼は、非常に珍しいことです。長年活動してきて、やっと信頼してもらえたとうれしくなりました。
――人を撮るコツは?
単純なことだけど、相手に「撮っていい?」と聞く。これは必ずしています。
以前、飢餓で苦しんでいるエチオピアを訪問したとき、現地の人にカメラを向けていたら結婚前の夫に言われたんです。「人は風景じゃない。勝手に撮ってはいけないよ」って。それで相手に「いいですか?」と聞くと、「いやだ」「こんな惨めな姿、撮らないで」ってみんな言うんですよ。それ以来ずっと「黙って撮らない」は守っていて、今回も、子どもたちには許可をもらっています。私、昔から子どもとすぐ仲よくなるという特技があるんですよ。ちょっと話すとすぐ笑って、なついてくれる。私自身が幼いのかな(笑)。そのおかげで、だいたい私が撮る子どもは笑顔。
ただ私たちが帰ったあと、被災した子どもたちは半年後、1年後がつらくなるでしょう。支援を続けていくためには資金が必要です。そのためにも、写真をいろんな人に見せて寄付を募り続ける必要があると思っています。2900万人が被災して、6万9千人が亡くなって……と言葉で伝えることも大事だけど、たくさんの人に彼らの現状を伝えようと思ったら写真の力がやはり大きい。
写真は自分が気づかなかったものを記録し、私が語れない物語を語ってくれる。だから何でもいいから、1枚でも2枚でも多く撮ることが大事だと思っています。
※このインタビューは「アサヒカメラ 2008年10月増大号」に掲載されたものです