『Live and Well in Japan!』Benny Carter
『Live and Well in Japan!』Benny Carter

 1920年代の終わりから1940年代の半ばまでベニー・カーターはジョニー・ホッジス、ウィリー・スミスとともにスウィング期の三大アルト奏者に擬される名手として、ビッグバンド演奏の一定型となった流麗なサックス・ソリ(サックス・セクションによる即興的ラインの合奏)を創案した名編曲者として、バンドリーダーとしてトップクラスにあり、高い音楽性と紳士的な風貌から「キング」と尊称されていた。しかし、何度かにわたって率いたビッグバンドは商業的成功とは無縁で過小評価に甘んじた巨人だったと言える。1940年代の半ばには活動の舞台を映画TV音楽の世界に移し、無数のスコアを提供しつつ折りにふれてJ.A.T.P.ツアーに参加したり録音を残したりしていた。1960年代の半ばには作編曲の仕事が多忙で演奏活動はままならなくなっていたが1970年代の半ばに本格的に復帰し、80歳を迎えた1987年以降も演奏に作編曲に往時にも勝る旺盛な活動を続けた。

 そんななか、我が国にもカルテットを率いて訪れている。1973年7月、J.A.T.P.オールスターズでの来日から20年ぶりのことだった。それに続く三度目の来日は1977年4月、編曲手腕も活きる大型コンボを率いてのもので、推薦作はそのときの東京公演の記録だ。トランペット2本、トロンボーン1本、サックス3本、4リズムという編成はいまでこそテンテットまたはデクテットと呼ばれる大型コンボの一編成だが、デューク・エリントン楽団をはじめ初期ビッグバンドの標準だった。小さすぎず大きすぎず、適度に編曲されたアンサンブルと各メンバーのソロを楽しめる、モダン・スウィング向きの編成と言える。筆者が観たのは大阪公演だ。近頃はアーリー・ジャズ専門家と有難くもあり有難くもない紹介をうけがちだが、ビギナーだった当時はスウィングに関心はなく居並んだ名手たちも半数は知らなかったはずだ。目当てはモダン派の名ギタリスト、マンデル・ロウだった。

 幕開けは《スクォティ・ルー》、なんという乗りの良さだろう、開始早々気分は極楽。ソロは均整のとれたジョー・ニューマン(トランペット)、黒々としたバド・ジョンソン(テナー)、ブリっと迫るブリット・ウッドマン(トロンボーン)、意外に素敵で見直すセシル・ペイン(フルート)、華麗なカーター、グロウル奏法を軸にハイノートを絞って見せ場をつくるキャット・アンダーソン(トランペット)、端正なロウ、闊達なナット・ピアース(ピアノ)と続きテーマ、アウトロで終える。終始ゾクゾクきてウルウルきた。

 《トリビュート・トゥ・ルイ・アームストロング》はトランペッター3人によるルイの愛奏曲集だ。トランペットの名手でもあったカーターの《南部の夕暮れ》では亡き友への思いに胸打たれ、素直に綴ったアンダーソンの《コンフェッシン》には敬意がしのばれ、ニューマンの《君微笑めば》ではルイを模した歌も楽しめる、心からの捧げ物になった。

 お馴染み《ゼム・ゼア・アイズ》はなんとワルツ・テンポで始まるがフォービートへの 切り替えが決まり実に痛快だ。カーター、ニューマン、ジョンソン、ウッドマン、ペイン(バリトン)、アンダーソン、ロウ、ピアースが乗り乗りのソロを繰り広げて遺憾がない。

 《スウィングしなけりゃ意味がない》はスウィングどころか猛烈にドライヴする熱演、カーター、ニューマン、ジョンソン、アンダーソン(火炎放射!)、ロウ、ウッドマン、ペイン(バリトン)、ピアースと続くホットなソロで会場は炎に包まれる。ホンマやで…

 聴き通して、ハッピーな気分で帰路についた昔日を思い出した。贅沢な不満を言えば、血沸き肉躍るうちにいつしか終わって物足りなく思えることだろう。我が国でカーターの評価を高めた名コンサートの記録だ。リンク先では高値が付くが容易く見つかるはずだ。[次回11/18(火)更新予定]

【収録曲一覧】
1. Squatty Roo 2. Tribute to Louis Armstrong: When It's Sleepy Time Down South - Cofessin' That I Love You - When You're Smiling 3. Them There Eyes 4. It Don't Mean a Thing (If It Ain't Got That Swing)

Benny Carter (as, tp), Cat Anderson, Joe Newman (tp), Britt Woodman (tb), Budd Johnson (ts), Cecil Paine (bs, fl), Nat Pierce (p), Mundell Lowe (g), George Duvivier (b), Harold Jones (ds).

Live and Well in Japan! / Benny Carter (OJC [Pablo Live])

Recorded at Kosei Nenkin Hall, Tokyo, April 29, 1977.

※このコンテンツはjazz streetからの継続になります。