著述家でありフリー編集者でもある著者が、これまでの半生を振り返りながら書き綴った「論理と情緒が共存した考え方レッスン」。
 とにかく泥臭いし汗臭い。大ヒットを飛ばした『盲導犬クイールの一生』が実は企画持ち込み十一社目でようやくゴーサインが出たのに、担当者の人事異動で二度も出版が延期されたとか、同棲していた恋人が、ある日突然すべての家財道具とともに消えてしまったとか……普通だったら隠しておきたい失敗談をネタに、どう考え、どう動くべきかが赤裸々に説かれてゆく。
 一見、自己啓発系ビジネス書のようだが、その手の本にありがちな「読んだだけで満足してしまう」内容ではない。ぶつける、分ける、開ける、転ぶ、結ぶ、離す、笑う。7つの動詞をキーワードに、受動的な行動パターンを打破し「愚直に動くこと」の大切さはもとより、それが「誰だってできる」ことだというハードルの低さを打ち出すことで読者を実際の行動へと導いてゆく。何より魅力的なのは、著者がいまこの瞬間も愚直に動いているであろうと思わせる誠実さが感じられることだ。

週刊朝日 2013年3月29日号