私は親しい人にパワーストーンを贈ることがある。石が大好きで、鉱石事典を持ち、パワーストーンセラピストという資格を取ろうかと思っているくらいの愛好家なのだ。
石にはそれぞれ伝説があり、効能書きもある。どこまで効果が証明されているのかはわからないけれど、何かいいことがあるのではと妄想するだけでも、とても楽しい。
で、先日、親しいイケメンくんに「エンジェライト」という水色の石のストラップをあげた。ヨーロッパでは天使が宿り、人を正しい方向に導く力があるとされているのだとか。
最近人間関係に悩んでいる彼にエンジェライトのストラップを渡すと、
「正しい方向に導く石だというのなら、間違ったことをしたら邪魔してくるのかもしれないね」
という話になった。
そして二人で、相性が良くない相手に会おうとしたら、何かハプニングが起きて会えなくなったりするんじゃないか、たとえば急に電車が動かなくなっちゃったり......などと想像を巡らせて楽しんだ。
その2週間後、私は彼と食事に行く約束をしていた。しかし天気予報は台風直撃だった。当日、なんとか台風は逸れたけれど、今度は約束の時間を彼が1時間も間違えた。そして彼の乗ったバスが遅れ、さらに到着が延びるという。
(もしかして今日は会えないんじゃだろうか。ひょっとしたらあの石の仕業なんじゃないだろうか)
自分で贈った石のせいで、私は慌てる羽目になった。もし今日会えなかったら、私たちは相性が悪いと石にみなされたということだろうか。それは困る。私たちの相性は最高のはずなのだから!
約束から1時間10分遅れで現れた彼に「もう会えないかと思った」と弱気な一言を漏らすと、「大丈夫、絶対会うよ」と男らしく胸を張った。そして遅刻のお詫びに、と挑んだプリクラ(撮影料金400円)では、肩をぎゅっと抱いてくれた。だから私はこのハプニングに感謝することにした。
帰りがけに、彼がぽつっとつぶやいた。
「あの石、案外当たってるかもしれないよ。このあいだ、合コンするはずだったのに、急に中止になっちゃったんだ」
「そうなんだ!」
私はニヤけた。そして改めて、今日彼に会えて本当に良かった、と思ったのだった。