原発事故から12年。いまだタケノコやキノコなどから、基準値を超える放射性物質が検出される。事故で大地に降り注いだ放射性セシウムは、いまどうなっているのか。AERA 2023年3月13日号から。
* * *
東京電力福島第一原発から北西に約60キロ。福島市山口地区の山あいに、手入れの行き届いた竹林が広がる。
「こうしておかないと、竹やぶになり、荒れ放題になってしまうから」
100年以上続く農家の3代目、安田和昭さん(71)はそう話す。市内を代表するタケノコ生産者で、約1.5ヘクタールの竹林を有している。そこでとれるタケノコは、白くて柔らかく、えぐみが少ない。刺し身にして食べられるほどだと評判で、首都圏にも出荷されていた。だが、その自慢のタケノコは、12年近く出荷が止まったままだ。
■基準値超のセシウム
2011年3月。福島第一原発が爆発して大量の放射性物質が放出され、大地に降り注いだ。国は12年4月から、1キロあたり100ベクレルの基準値を超える放射性セシウムが検出された一般食品について出荷制限の措置を取った。その後、安定的に基準を下回る状況が確認されたものから順次制限は解除されているが、福島県では現在も福島市、伊達市、二本松市など22市町村でタケノコから基準値超のセシウムが検出される。17年、安田さんが保有する竹林のうち、柚子と同じ圃場(ほじょう)は農林水産業の事業によって除染が行われた。それ以降、除染された圃場からとれるタケノコからは基準値超のセシウムは検出されていない。だが、森林は原則、除染は行われていない。近隣の山林でとれるタケノコは今も基準値を超えるため、市全域でタケノコの出荷制限は続く。
■農産物として扱って
それでも安田さんは毎年の間伐を怠らず、竹林に入り、落ち葉を集め、草を刈る。安田さんは訴える。
「環境省管轄の森林について、国は除染をしないと決めた。竹林は森林に含まれるとされたため、除染の対象外となっている。農林水産省管轄の農産物として取り扱ってほしい」