欧米では「豆」を甘く調理することがない、とケイリーンさん。言われてみれば、そうかもしれません。でも、豆から作るあんこは和菓子には欠かせません
欧米では「豆」を甘く調理することがない、とケイリーンさん。言われてみれば、そうかもしれません。でも、豆から作るあんこは和菓子には欠かせません


「じゃあ、使ったことがない画材なら、自然に自分のタッチが見つかるんじゃないかと思ったんですね。そこで描くようになったのが水彩画。仕事ではパソコンを使ってイラストを描いていましたが、デジタルに比べるとアナログな水彩は、一発勝負で修正がむずかしい。だから自然に自分のタッチが見つかるかもしれない、と」

 そうして見つけたケイリーンさん「ならでは」の水彩のフードイラストは今や300点以上にのぼり、SNSに定期的に投稿するうち国内外からも注目を集めるようになった。同書では、そのうち80点のイラストを厳選して紹介。描いた食べ物のチョイスも、またユニークだ。

 回らない寿司店、築地青空三代目の4950円のお寿司から、果実園リーベルのスリーベリーパフェ(2400円)、吉野家のねぎ玉牛丼(544円)、赤城乳業のガリガリ君 ソーダ(76円)まで、おなじみのチェーン店の人気メニューもあれば、マニアしか知らない店の隠れた逸品もけっこう。東京の町を隅々まで知り尽くしたすごい食通がバックにいるのかと思いきや、意外にも描く食べ物の見つけ方はこうだった。

「たまたま食べたものがおいしかったから、きれいだったから描きたいという奇跡の出会いもありますが、ほとんどは事前のリサーチで決めた店。例えば今日はどうしても大福を描いてみたい、食べてみたいという日があるとしますよね。そういうときは、グルメサイトを見たり、SNSに誰かが上げた写真やレビューを見たり。とにかくいろんなリサーチをして、大福のビジュアルが美しいだけでなく、大福やお店にストーリーがあったりする店を絞り込んでいくんです」

 そうしてターゲットを見つけたら、実際にお店に足を運び、写真を撮って実食。家に帰って、お店のあれこれや、食べたときのおいしさを思い巡らせ、写真を見ながらだいたい4~5時間かけてイラストを仕上げるのがパターンだ。また「空腹時閲覧キケン」なおいしそうなイラストに仕上がっているのは、こんな理由も。

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