前出の鈴木エイト氏によると、旧統一教会側もそうした政治家の心理をよくわかって行動しているという。
「旧統一教会系の団体は、政治家が地方議員の時から後援会組織に運動員を派遣しています。選挙のスタッフを数多く派遣して、マンパワーで議員を支えるんです。そうやって事務所に入り込み、議員の弱みまで握って、最終的には自分が選挙に出るというところまで構想を持っているのが旧統一教会なのです」
80年代後半から90年代前半にかけては、霊感商法などが社会問題化した旧統一教会。だが、教団の名称変更やマスコミ報道が下火になったこともあり、世間からネガティブなイメージは次第に薄れていった。
「2006年に安倍晋三氏が旧統一教会の友好団体である天宙平和連合(UPF)の大会に祝電を打った時以降、政治家が旧統一教会の関連団体主催の集会に出席したり、祝電やメッセージを送ったりしても、メディアは報じなくなりました。それゆえ、政治家と教団の関係性はなかなか表面化せず、問題にもされなくなった。議員たちも問題化しないから、何回もくり返すようになりました」
鈴木エイト氏は「旧統一教会と関わりを持った現職国会議員」と題した100人を超えるリストを作成し、メディアに提供した。国会議員が旧統一教会系の団体のイベントに参加したり、祝電やメッセージを送ったりした事例、旧統一教会系の新聞「世界日報」のインタビューを受けた政治家や献金を受けた国会議員をリストアップした(7月18日時点)。
このうち9割は自民党議員だったが、野党議員も含まれていたことは世間に波紋を広げた。
昨年9月、安倍氏は旧統一教会のイベント「神統―韓国のためのTHINK TANK2022 希望前進大会」にビデオメッセージを送り、「(文鮮明の後継である)韓鶴子総裁をはじめ、みなさまに敬意を表します」と述べた。
「安倍氏はあの日に限って統一教会との関係を隠しませんでした。翌日以降はビデオは公開しないとの条件でしたが、あの映像が拡散しても自民党にも、自身の政治生命にも、何の影響もないと思っていたのでしょう。逆に旧統一教会や関連団体は、安倍氏に近い議員たちから堂々と祝電をもらったり、祝辞を受けたりすることで、問題のない団体であるというお墨付きを得た。メディアも政治家と旧統一教会の関係を問題視して報じる姿勢は一切ありませんでした。それが今回の銃撃事件を生んだとしたら、政治家もメディアも検証されなければいけないと思います」(同)
(AERA dot.編集部・上田耕司)