地震の際、高層ビルが地盤と共振して大きく揺れ、被害を受けるケースがある。南海トラフなど大地震が起こった時、超高層ビルにいたらどうすればよいのか。AERA 2023年3月6日号から。
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超高層ビルは、ガタガタという普段よく経験する短周期の地面の動きでは揺れにくい。超高層ビルが増え始めた70年代以降、大きな長周期の揺れをもたらす巨大地震が少なかったこともあり、「超高層は地震に強い」という安全神話が信じられるようになっていった。
その間に超高層ビルの数はどんどん増えた。例えば東京消防庁の管轄区域で、20階建て(約60メートル)以上のビルは83年には59棟しかなかったが、2021年には1008棟に増えている。約17倍だ。
95年の阪神・淡路大震災以降、地震計が全国に緻密に配置されるようになり、地面の揺れの詳しい性質や、それによって建物がどんなふうに揺さぶられるのか、研究が進んだ。そんな中で、03年の十勝沖地震(M8.0)の際、北海道苫小牧市内の石油タンクが長周期の揺れで炎上したことをきっかけに、長周期地震動のリスクが注目されるようになった。
「首都圏、名古屋圏、大阪圏に立つ既存超高層建物は、南海トラフの巨大地震によって、設計時に想定したより相当長い時間にわたって大きく揺れる可能性が高い」
研究の進展を受け、日本建築学会が超高層ビルにこんな警告を発したのは、東日本大震災のわずか7日前のことだった。
「都心部に林立する超高層建物群がもろくも崩壊する可能性はほとんどない」とするものの、「超高層建物はいまだ大きな長周期地震動の洗礼を受けていないので、これら建物への被害や、被害に伴う生活や事業の阻害には未知の部分が多い」とも述べていた。
そして東日本大震災。震源は南海トラフではなく日本海溝だったが、大阪、東京などの超高層ビルは、建築学会の予測通り、大きく長く揺さぶられた。
東日本大震災以降、南海トラフで起きる地震の想定も見直され、それがもたらす長周期地震動の想定もさらに大きくなった。