多くの日本人が欠かさない初詣やお彼岸の墓参も立派な宗教儀式ではないでしょうか。「仏教徒である」「神道家である」と自己紹介が許される範疇に入っていると思います。遠慮してハードルをあげることはないのです。
仏教徒(Buddhist)もしくは、神道家「Shintoist」など自分と関係のある宗教を信仰していると言い切っていい。なぜならば、下手に説明しようとすると却って誤解を生みそうな単語もあるからです。
たとえば、「不可知論者」を表す「agnostic(アグノスティク)」。「I’m agnostic」といえば、神の存在を証明することや反証することができないと主張する人を指します。「atheist」よりは穏健な響きがあるが、無神論者と受け止められるかもしれない。
「疑い深い」を意味する「skeptic (スケプティック)」は、神の存在を疑う人間ーーと言うやや強いニュアンスがあります。相手から、「それはどういう、考えなのだ」と興味を持って質問される可能性もあります。
英語を使い慣れない人は、「Iam a Buddhist.」など簡明な表現で言い切るほうがいいでしょう。相手も「ああ、そうか」と安心して、会話がスムーズに流れます。
それでも、「無宗教である」と伝えたい気持ちが強いならば、「religious(信心ぶかい)」を使い、「I’m not a religious person(私は信心深くない)」
と言うのもよいでしょう。
仕事では相手の宗教把握は必須
海外では宗教の話題は避けたほうがよいとアドバイスをする人もいますが、ビジネスの場で、宗教の話題を避け続けるのは不可能です。
私はチュニジア、ラトビアで大使を務めました。とくにチュニジア在任中は、アラブの春の先駆けにもなったジャスミン革命(2010~11年)が勃発しました。大使公邸敷地内にも軍が入り込み、廊下でうつ伏せになって銃撃戦が止むのを待ちました。そうした状況で、日本人観光客200名の脱出をやり遂げなければならない危機的状況にも直面しました。