弁護士の青木千恵子さん(写真/本人提供)
弁護士の青木千恵子さん(写真/本人提供)

 長年、性被害者の支援を行ってきた弁護士の青木千恵子さんは2020年10月、JR埼京線の車内で痴漢被害に遭った。AERAdot.の取材に対し、専門家として“防衛術”や弁護士の選び方を語った。
※記事の前編<<「お尻を触られている」痴漢被害に遭った弁護士が実名告白 被害者の心と体を蝕む恐怖と自己嫌悪>>から続く

【写真】弁護士の青木千恵子さん

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 青木さんは性被害者を支援する活動を学生の頃から20年以上続けている。はじめは心理カウンセラーの資格を取り、心のケアを続けてきた。ただ、当時の日本は被害者を救う制度があまりに脆弱だった。

 被害者を支援する法制度の改革が必要だと、早稲田大学大学院法務研究科で研究に打ち込んだ。さらに現場で被害者を救うために弁護士になろうと決心し、法科大学院に入り直した。2018年、41歳で司法試験の合格を手にした努力家だ。

 青木さんは、今年9月に記者会見を開き、この時の痴漢被害について現役の弁護士として実名で訴えた。

 ニュースで報じられると、ネット上には、青木さんを責める声も書き込まれた。

<露出度の高い服で帰宅ラッシュの電車に乗るのが悪い。痴漢されて当然だ>

性被害に遭った女性へ向けられる批判の多くは、大抵「そんな服装をしているのが悪い」という種類のものだ。

 まず青木さんが被害に遭った日は、弁護士としての業務中。青木さんはワンピースにジャケットの仕事着であった。

 そして「服装が原因で痴漢被害に遭う」という指摘。青木さんは「それは誤解だ」ときっぱりと否定する。

 青木さんは、痴漢やわいせつの被害に遭った少女や女性を何百人と支えてきた。

「断言できます。痴漢する人間は、相手の服装など見ていない。性犯罪に遭う原因とまったく関係ありません」

 実際、青木さんも痴漢被害に遭った時は、ジャケットの襟に弁護士バッジをつけていた。

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痴漢の男「お尻ばかり見て、バッジに気づかなかった…」