その場合、加害者側の弁護士としての仕事をしている場合が多いからだ。
被害に遭って体も心も傷ついている場合は、「被害者に寄り添う」という志を持った弁護士と二人三脚で歩むことが大切になってくる。
さらに、性被害者支援を専門とする弁護士は、行政の支援サービスなどにも詳しい。都道府県単位でも支援はあるが、一歩進んだ行政制度を整えている自治体もある。たとえば、東京都中野区は、中野区犯罪被害者等支援条例によって手厚い支援体制を敷いている。
青木さんによれば、被害に遭った人は、「ご飯が食べられない」「恐怖で外にも出られない」「人に会うこともできない」など、衣食住がガタガタになるケースも少なくない。家族の世話や食事の支度ができなくなれば、家庭が崩壊しかねない。そうした人たちを救うために、保育園や幼稚園の送り迎えや家事の援助、自宅に弁当を届けてくれる配食サービスや弁護士費用などの助成が行われるケースもある。また、自宅に侵入されて犯罪被害に遭うことなどでこれまでの住まいへの居住が困難になる場合についても、20万円を上限としてホテル宿泊費や転居費用への助成もある。
地域によって内容は異なるものの、被害者支援を行う自治体は全国的にも増えている。
「日本でもようやく、被害者の心の傷に寄り添う支援制度が構築されつつあります。もし不幸にも被害に遭われた方は、家族など周りの方が居住する自治体の支援制度などを調べるのもいい。また、支援団体はこうした情報を把握していますから、ぜひ相談してください」
青木さんは、不幸にも犯罪被害に遭った。だからこそ、被害者の心の傷に寄り添う弁護士として活動している。
(AERA dot.編集部・永井貴子)