訓練中に性被害を受けたとして調査を求めていた元陸上自衛官の五ノ井里奈さん(23)に対して、防衛省は29日、複数の男性による五ノ井さんへのセクハラ行為があったことを認め、本人を前に謝罪会見を開いた。この件で防衛省が公にセクハラを認めるのは初めて。五ノ井さんは、福島県の郡山駐屯地に所属していた昨年8月、上官だった一曹と二曹の指示を受けた三曹の男性隊員3人から、首に両手を当てて押し倒すような技をかけられ、衣服越しに繰り返し陰部を押し当てられるなどの性被害を受けたと訴えていた。防衛省幹部は「長らく苦痛を受けられた五ノ井様に対し、深く謝罪し、おわびを申し上げる」と五ノ井さんに謝罪した。
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五ノ井さんは、今年6月末に自衛隊を退職し、YouTubeやSNSなどを通じて被害を訴えてきた。8月末には防衛省を訪れ、第三者委員会による公正な再調査を求めるオンライン署名約10万5千筆と自衛隊内のハラスメント事例を集めたアンケートなどを提出。これを受け、9月6日に浜田靖一防衛相は、現役隊員を対象にハラスメントの実態を調べる「特別防衛監察」を実施すると発表した。そうした中で、今回、防衛省は自衛隊の内部調査の結果をやっと公表し、複数のセクハラ行為があったことを認めた。
内部調査から、防衛省が事実として認めたハラスメント行為は以下の4つ。
・所属部隊において、性的な発言や接触が日常的に行われていたこと
・2020年秋に警衛所において隊員が性的な身体的接触を行ったこと
・21年6月、演習場における野営において、隊員が身体的な接触や発言を行ったこと
・21年8月、演習場の宿泊施設において、隊員が五ノ井さんを押し倒して性的な身体接触を行い、口止めを行ったこと
また、21年8月に受けた被害について、五ノ井さんが中隊長に報告したにもかかわらず、大隊長に報告を上げていなかったことや、事実関係の調査をしていなかったことも認めた。