映画史にその名を残してきたスティーブン・スピルバーグ監督、初の自伝的作品「フェイブルマンズ」。本年度のアカデミー賞では、作品賞、監督賞、主演女優賞(ミシェル・ウィリアムズ)、助演男優賞(ジャド・ハーシュ)、脚本賞、作曲賞、美術賞の7部門にノミネートされている。
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1952年、両親と初めて映画館を訪れ、「地上最大のショウ」を観たサミー・フェイブルマン少年は映画に夢中になる。以来、自ら8ミリカメラを手に、家族の休暇や旅行の記録係となり、妹や友人たちが出演する作品を制作するのだった。そんなサミーを、音楽家の母ミッツィ(ミシェル・ウィリアムズ)は応援するが、有能な科学者の父バート(ポール・ダノ)は不真面目な趣味だと考えていた。
やがて一家は父の転勤で、ニュージャージーからアリゾナ、さらにカリフォルニアへと引っ越す。そして新しい土地での心揺さぶる体験が、サミーの未来を変えていく。そんな中、ミッツィのおじであるボリスおじさん(ジャド・ハーシュ)が訪ねてくる。
本作に対する映画評論家らの意見は?(★4つで満点)
■渡辺祥子(映画評論家)
評価:★★★
普通にイイ感じだが、映画小僧のお茶目っぽいところも見たかった。大物監督が振り返って描く少年の日はまっとうで、面白味より真面目が際立つ。夢と未来が一つになったラストシーンがうれしく、ここがスピルバーグ!
■大場正明(映画評論家)
評価:★★★★
自身が育った郊外の世界を巧みに作品に取り入れることで頭角を現したスピルバーグが、ルーツに正面から向き合い、愛情を込めて生き生きと描き出している。映画ファンの心を奪うラストも含め、円熟の境地を堪能できる。
■LiLiCo(映画コメンテーター)
評価:★★★★
いろんな出来事と映画愛が描かれていますが、憧れの人の言葉のインパクトが強すぎて脳裏から離れない。しかもそこからのラスト! 流石に笑いました。まさに誰かの一言で人生が左右される事実が皮肉で面白くてリアル。
■わたなべりんたろう(映画ライター)
評価:★★★★
ノスタルジックなだけでなく、生きるうえで誰もが生きづらさを抱えていることを描くことに成功。キャラクター描写の際立たせ方(どのキャラクターも初めと違う素顔を見せる)と演じる俳優の魅力的な演技に感嘆。
(構成/長沢明[+code])
※週刊朝日 2023年3月10日号