「覚えやすい共通の番号をつくれば電話相談のハードルは下がり、相談がしやすくなる。東京は僕らだけでは足りない。赤ちゃんポストに取り組む病院が現れてほしいです」(小暮さん)
赤ちゃんポストの計画には一部の産婦人科医から反発を受けた。小暮さんは言う。
「赤ちゃんポストはないに越したことはない。でも行政の特定妊婦支援策につながらずに、孤立出産して赤ちゃんを殺害してしまう女性が現実にはいます。赤ちゃんの命を守るために必要な選択肢です」
■相談業務充実できるか
他方、江東区児童相談養育支援担当課長の小越誠さんは「まだ具体的な提案を受けていない」としたうえでこう話す。
「相談業務をどれだけ充実できるかと、赤ちゃんに救急医療が必要な場合に備えた病院との連携体制を整えられるかに注目している」
当別町のベビーボックスでもハイブリッド型運営が始まった。熊本市の慈恵病院が連携に名乗りを上げたのだ。預け入れられた赤ちゃんに医療が必要な場合に受け入れ病院との交渉を行う。また、相談した妊娠女性が病院での出産を希望した場合、受け入れるという。熊本までの移動費と入院費は慈恵病院が持つ。
北海道庁は妊娠相談業務の強化に乗り出した。札幌市の社会福祉法人麦の子会が運営するにんしんSOSほっかいどうのLINE相談に、24時間対応のための運営時間延長を委託。相談件数は22年12月に107件、23年1月に154件と増加傾向だ。道庁の小助川さんは言う。
「赤ちゃんポストを必ずしも否定しているわけではない。当別町の安全面の問題を見過ごすことはできません。でも、仮に札幌などの都市部で安全が担保された施設で設置されるなら我々の対応も異なります」
ベビーボックスの出現が思わぬ形で行政を揺さぶっている。
平成の「ゆりかご」から16年。令和のハイブリッド型赤ちゃんポストは広がるだろうか。(ノンフィクションライター・三宅玲子)
※AERA 2023年3月6日号より抜粋