そんな中で、今季はGPシリーズ初参戦ながらトリプルアクセルを跳んで進出したファイナルで4位になった渡辺倫果(法政大)や、今季からのシニア移行で、GPシリーズは2戦とも3位になり、今回のフリーでは4分の1の回転不足ながらも4回転トーループを着氷した住吉りをん(オリエンタルバイオ/明治大)が、これからどこまで安定感を身につけていくかが重要になる。
ふたりはともに今回は、「表彰台に乗り、世界選手権出場」という欲を持って大会に臨んでいた。そんな気持ちが空回りしてSPではミスを連発して住吉が17位、渡辺が18位という予想外の発進になり、フリーでも渡辺が9位で合計12位、住吉は14位で合計14位と巻き返し切れなかった。
渡辺はスケートカナダで優勝をしたあと、NHK杯ではファイナルを狙う緊張感で崩れた経験はあるが、昨季までのISU公認大会は初出場だった世界ジュニアのみで、今季が初の本格的な世界への挑戦。住吉も19年から怪我で苦しみ、復活した昨季は世界ジュニアに出場しているが、シニアの大舞台は今季が初めて。ともにまだ、修羅場といえるような戦いを経験していないこともあり、自分に期待して欲を持って戦うのは初めての経験だった全日本では崩れてしまった。強力な武器を持っているだけに、ともに今回の経験をうまく生かしてメンタルを磨き、坂本や三原を脅かすまでにならなければ、本当の日本女子の強さは復活しないだろう。
また、昨季は北京五輪と世界選手権に出場した河辺愛菜(中京大中高)や、しなやかで質のいい滑りをする千葉と、トリプルアクセルを持つ吉田。さらには、今季は体調不良で力を出し切れなかったがSP、フリーともに基礎点が1・1倍になる後半に連続ジャンプを並べられる力を持つ松生理乃(中京大中京)が、実力のあるジュニア勢の刺激を間接的に受けながら力を付けて女子の層を厚くさせていけるかも重要だ。
完調になれば4回転もトリプルサルコウも跳べる紀平梨花(トヨタ自動車)の復調は最も期待されるところだが、26年五輪シーズンへ向けた日本女子フィギュアのレベルアップは、現在の3番手グループの成長にかかっている。(文・折山淑美)