書店を訪れる習慣のない人をどうやって書店に引き込むか、本を読む習慣のない人にどうやって読書に興味を持ってもらうか。若い人たちの中には、「大きな書店は怖い」「敷居が高い」と思っている人もいるかもしれない。しかし、用が無くても、暇つぶしでも待ち合わせでも、とにかく書店には自由に入ってくれていいんだというメッセージが、紀伊國屋新宿本店にはある。
それにしても、伊藤潤二である。新宿通りを歩く人たちの目を惹く記念フェアの展示は、今日も大賑わいだという。
「都心の一等地という場所柄いろいろな提案をいただきますが、売上や広告料を稼ぐだけの場にするつもりはなく、あくまでも本を売ることにこだわった催事を行なっていきます。今回は、伊藤先生を知らなかった人や海外のお客様も熱心に展示に見入っています。新しい読者を呼び込んでいくための催事をこれからも工夫していきたいです」(星真一)
■本を手がかりにして、人と情報が行き交う場所に
町から本屋が消えている。2000年、全国に2万1,654店あった書店は、20年には1万1,024店となった(アルメディア調べ)。20年で約5割が減少した背景には、インターネットの普及や人口減などが言われている。これからの書店に必要なこと、また未来の書店はどうあるべきなのだろうか。
「未来にも出版があり続けるためには読者、とりわけ若い読者を増やしていく必要があります。そのためには読者が出版物に触れる場所=タッチポイントを減らさない努力が必要で、書店はその最前線だと思っています。ネットで買えるから書店はいらない、という考え方では読者を育てる土壌はどんどんやせ細っていくでしょう。法や制度を頼らず書店が自ら町に必要とされるためには、本の作り手である著者や出版社がその本にかけた熱を冷まさず読者に手渡すことができなくてはいけません。本を手がかりにして人と情報が行き交う、活気ある場所を作っていきたいと考えています」(星真一)