作家・北原みのりさんの連載「おんなの話はありがたい」。今回は、韓国・美容の旅について。
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韓国に行って来た!最後に行ったのは2019年8月だから、ほぼ3年半ぶりのソウルだ。3カ月ほど前から女友だち5人と、韓国で美容の旅をしようと盛り上がり計画を進めてきたのだ。50代の女たち、みなそれぞれ気になるところがある。眉間のシワが深すぎる、ほうれいせんが深すぎる、顔色が悪すぎる、すごく元気なのに「疲れてる?」と心配されてしまうなど、日本社会で生きる苦労が顔に滲み出すぎている……というわけで、美容技術最先端の国でいろいろ試してみましょう、ということになったのだった。
成田空港は、だいぶ活気を取り戻していた。ソウル行きの機内は満席で、LCCだからか若い女性が圧倒的に多い。とはいっても、LCCですら韓国往復で5万円してしまうご時世だ。戦争と円安の影響で海外がどんどん遠くなっているなか、こんなふうに若い女性たちが日本を出て海外に向かう飛行機に乗っている姿を見ると、まだもう少しは大丈夫、という思いにもなるものだ。
さて、韓国に着いた私たちが向かったのは、大手の美容皮膚科。日本では珍しい最新の機械が何十台も揃っていることがウリだという。しかも料金は低いのに、日本では出さない高出力でレーザーをあてるので効果が凄いらしい。
実際に行ってみると、一見してすぐにわかる盛況ぶりだった。営業時間前に着いたのだが、スタッフ30人ほどが熱心にミーティングをしており、定時になると「ファイティンッ!」と韓国特有の挨拶をしながら、各自が所定の場所につき一斉に作業をはじめた。それは皮膚科というよりは、商社のオフィスに来たような雰囲気だ。待合室にはパンや飲み物が用意されていて、ずらりと並ぶソファもゆったりとしていて、病院感は限りなく薄い。次々に訪れる患者は若い女性が多いのだけれど、それと同じくらい若い男性も目立っていた。中国語を喋る男女数人ともすれちがったりした。