落語家・春風亭一之輔さんが週刊朝日で連載中のコラム「ああ、それ私よく知ってます。」。今週のお題は「反響」。
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前号から引き続き、「笑点」のはなしで恐縮です。『反響』というお題ですから、それがお望みなんでしょう。私だってそれくらいのことはわかりますよ。
2月5日放送の「笑点」で、私が新メンバーとして加わることが発表されました。その時私は「笑点」の後の「バンキシャ!」生出演のため、局の楽屋でテレビを観ていました。自分の姿が画面に映ったその瞬間、お祝いのLINEやメールが怒濤の勢いで届く届く。スマホが発作を起こしたように震えが止まらない。着信記録の数字がドンドン増えていく。怖え、怖えよ。
「おめでとう!」「やったね!」「今まで頑張ったね!」「これで安泰だね!」「人気者になっちゃうね!」「儲かるね!」「最高だね!」「すごい!」「驚いたよ!」「今度飲みに行こう!」「また会いましょう!」「なんか買ってくれ!」「金貸してくれ!」………テンション高えな。こっちはズーッと知ってたからそうでもないのだ。時間も無いので、とりあえずひとつずつ心の中で本音を返信。
「さほどめでたくねえ」「別に『やって』ねぇ」「その為には頑張ってねぇ」「そのうちクビになるかもしれねぇ」「オレ感じ悪いから、たぶん(人気者に)ならねぇ」「仕事の量はさほど変わらねぇ」「『最高』ではねぇ」「『すごく』ねぇ」「こっちも驚いたよ」「奢ってくれるなら行くよ」「たぶん会わないよ、オレあなたのことあんまり覚えてねぇ」「なんでだよ?」「貸さねぇよ」……。これをそのまま返すと喧嘩になるので「恐れ入ります、ありがとうございます」と通り一遍に、その後2日かけて返信しました。律儀マン。
……ていうか、みんな日曜の夕方、家に居るなぁ。で「笑点」観てるなぁ。好きだなぁ「笑点」。けっこうけっこう。「バンキシャ!」に出て、楽屋に戻るとマラリアにでも罹ったかのごとくまだスマホが震えている。落ち着け。開くと、メッセージ傾向がちょっと変わってきた。「身体に気をつけて」「無理しないでね」「本当に大丈夫?」「なんで引き受けたの?」「落語は捨てたの?」「寄席にはもう出ないの?」「遠くに行っちゃうの?」。まぁご心配もわかるが、そんなに変わんないって。レギュラー番組がひとつ増えた、くらいの穏やかーな受け止め方でいいんじゃないの?