マルティネスさんは自ら語るように、ラテン系の明るい雰囲気で常に笑顔を欠かさず、利用者に優しく語りかける(撮影/秋山訓子)
マルティネスさんは自ら語るように、ラテン系の明るい雰囲気で常に笑顔を欠かさず、利用者に優しく語りかける(撮影/秋山訓子)

 介護職を中心に17カ国約50人の外国人スタッフが働く社会福祉法人伸こう福祉会(本部・横浜市)。今のところ、技能実習生はゼロだという。AERA 2020年3月2日号では、同会が外国人スタッフを採用する際に重視している点や、様々な国の出身者がともに気持ち良く働く秘訣を伝える。

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 採用にあたって、業務経験や日本語のレベルなどの基準は特に設けていない。在留資格、就労資格があり、人を支援することに意欲を持っている人であれば、人柄重視で雇っている。

 外国人介護職を支援する専門の外国人スタッフもいる。ダール・ダニエルさん(34)はスウェーデン出身。日本のゲームが好きで、大学時代に日本に留学。スウェーデンにいったん戻って国際支援の仕事などをしたあと、14年に再来日して、伸こう福祉会に就職した。

 介護用語集やマニュアル、資料の多言語化や研修、海外からの視察の世話、スタッフ同士の交流会の主催などが仕事だ。

 同会理事長の足立聖子さん(50)も、「外国人の介護職は、できるだけ採用したいと思っています。優しくて一生懸命の人も多いですから。国籍関係なく、みんなでファミリーになれたら」と話す。

 ただ、伸こう福祉会では昨年10月時点で約38万3千人に上る技能実習生を、今のところ受け入れていない。母国での事前教育や、渡航のための費用として、送り出し機関などの関係者から「借金」して来日するケースもあったからだ。

「さまざまな機関から問い合わせが来ます。技能実習生が多額の借金を背負って来日する、というのはおかしいと思っていて、信頼できるパートナーを見つけながら様子を見ようと思っています」(足立さん)

 技能実習生は、過酷な労働条件で働かされ失踪する例などが相次ぐ。外国人採用に積極的、といっても、同会は安易に次々と採用しているわけではない。

 昨年新設された在留資格「特定技能」については、日本のワーキングホリデー制度で介護の仕事をし、その後、日本で学び、資格を取った男性を1人、直接雇用する予定だ。

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