その時に「すぐに砂に埋めたのに助からなかった……」ということを聞き、「フグの毒にあたったら、砂に埋めたら助かるなんて、どんなおまじないやねん」と子供心ながら思ったものです。

 テトロドトキシンは筋肉弛緩系の毒ですので、毒が回ると呼吸ができなくなって死に至ることが多いとのことです。かつて砂に埋めることで肺が圧迫され、横隔膜による腹式呼吸によってわずかに呼吸が確保されている間に解毒されて助かったケースがあったらしいことから、そういった説ができたともいわれています(諸説あるようですが)。

 テトロドトキシンには、現在も有効な解毒剤がなく、フグの毒にあたったら、一刻も早く病院に行って、人工呼吸器で呼吸を確保しながら、胃洗浄や下剤で、消化が進む前に毒を体外に出すしかないそうです。

 このようにとても恐ろしいフグの毒ですが、最近は毒のないフグも出回り始めています。諸説あるようですが、一般的にフグは生まれつき体内に毒をもっているのではなく、貝やヒトデなどの餌を通して体内に毒を蓄積していくんです。

 ということは、完全養殖によって、無毒の餌だけで育てたフグは無毒ということになります。以前紹介した鮭のアニサキスと同じですね。

 最近は完全に毒の原因となる餌と切り離した環境で、トラフグなどを養殖する取り組みが各地で行われています。中でも面白いのは、海とは無縁の内陸部でも養殖が行われていることです。海とは無縁なので、貝やヒトデといった毒の原因となる餌とは完全に隔離されていますが、そもそも海水魚であるフグをどうやって育てているんでしょうか? 食塩を混ぜて人工的に海水を作っていたんでは、コストがかかりすぎます。

 この課題をクリアしたのが、温泉の活用です。日本各地に湧いている温泉の中には、塩分を含むものもたくさんあります。栃木県などでは、この温泉をうまく活用して、無毒のトラフグ等を養殖して販売を行っています。

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「フグ肝」も並ぶ!?