冬においしい魚のひとつに、フグがありますね。代表的な食べ方は「てっちり」や「てっさ」でしょうか。通な方の中には「てっぴ」が好きという方もいらっしゃるかもしれません。
ご存じの方も多いとは思いますが、この変わった呼び方のルーツは、かつて大阪でフグのことを「てっぽう(鉄砲)」と呼んでいたことに由来しています。ご存じの通りフグには、青酸カリの850倍もの毒性を持つテトロドトキシンという猛毒があり、この毒にあたるとすぐに死んでしまうことから、大阪人独特のシャレでそう呼んでいました。そこから、「てっぽうのちり鍋→てっちり」、「てっぽうの刺身→てっさ」、「てっぽうの皮→てっぴ」となったとのことです。
このフグの毒ですが、基本的には内臓と血液中に蓄えられますが、実はフグの種類によって毒のある部位が微妙に違い、食べられる部位が変わってきます。例えば、フグの王様といわれるトラフグについては、食べられるのは、筋肉(いわゆる身の部分です)、精巣、皮とされています。しかし、釣りをしていて外道としてよく釣れるクサフグは、精巣や皮にも毒があります。
また身の部分については、大半のフグで食べられるとされていますが、きちんとした知識と技術をもつ人(要するにフグ調理の資格を持っている人ですね)が調理しなければ、身の中に血液が混じり、中毒になってしまうこともあります。
また最近は、温暖化の影響もあり、これまでは日本近海にはいなかったフグも近海に生息するようになり、それらのフグとの混成種も取れるようになっているようです。
それらの種が厄介なのは、どこの部位に毒が蓄積されているのかが明確にはわからないこと。素人の見た目では簡単には見分けられないとのことなので、やはり素人が付け焼き刃の知識で料理するのはリスクが高いのでやめておきましょう。
余談になりますが、筆者が子供のころ、同じ町に住んでいた方が、フグの毒で亡くなられたことがありました。その方は魚好きで、自分で釣ったフグの肝臓を「ピリピリするのが旨いんや」と時々食べていたそうですが、そこまでのリスクを冒しても食べたいものなんでしょうか?